先週の火曜、あるパン屋をフォローするか、3枚で決めた
先週の火曜、妻に「駅の裏に美味しいパン屋ができたよ」と教わって、その店のInstagramを開いた。フォローするかどうか、正直、3秒で決めた。決め手になったのは、プロフィールを開いた瞬間に目に入った、いちばん上の3枚だった。
その3枚が、たまたま良かった。焼きたての断面のアップ、店内の朝の光、そして「本日のおすすめ」を書いた黒板の写真。開いて数秒で「あ、行きたい」と思えて、フォローした。もしこの3枚が、店主の休日の食事や、他店のシェア投稿や、告知だけの文字画像だったら、私はそのままスワイプして閉じていたと思う。
ManyChatを125社に組んできて、この「プロフィールの先頭で全部が決まる」という感覚は、何度も現場で見てきた。プロフィールは、フォローするか・DMするか・スルーするかを判断される、店にとっての最初の入口だ。そして多くの店が、この最初の入口を「時系列任せ」にしている。いちばん新しい投稿が、勝手にいちばん上に来る。看板にしたい1枚が、下へ下へ流れて埋もれていく。
その常識が、2026年7月に崩れた。Instagramが、プロフィールの投稿を時系列固定から解放し、自由に並び替えられる「グリッド並び替え(Reorder grid)」を全ユーザーへ広く展開し始めた。今日は、この機能が地方店舗・個人事業主にとって何を意味するのか、そして今週プロフィールを触るだけで、広告費ゼロでどこまで導線が変えられるのかを整理する。
「グリッド並び替え」で実際に変わること(2026年7月時点)
今回展開が広がっているのは、プロフィールに並ぶ投稿の順番を、自分の手で入れ替えられる仕組みだ。操作もシンプルで、プロフィールで動かしたい投稿を長押し→「グリッドを並び替え」→ドラッグで好きな位置へ移動するだけ。さらに、有料の「Instagram Plus」に入っていると、上部に最大6投稿を固定する「ピン留め」も使える。
これまで「最新投稿が一番上」だったのが当たり前だったので、変化は地味に見えて、集客の観点ではかなり大きい。プロフィールが、投稿が勝手に流れていく「掲示板」から、自分で並べる「展示棚」へ変わる、という話だ。押さえるべき変化は、実質3つに絞れる。
飲食店、美容室、整体院、観光の体験サービス——「何屋で、どんな雰囲気で、今のおすすめは何か」を数秒で伝えたい業種ほど、この変化は素直に効く。時系列に任せていたぶん埋もれていた「勝負の1枚」を、自分の意思で先頭に持ってこられる。ここまでは、ただの朗報だ。
ただ、125社を見てきて確信していることが1つある。並び替えは、放っておくと「見た目を整えて終わり」で止まる。先頭3枚を綺麗に並べれば、フォローは増える。けれど、フォローしてもらっただけでは、その人の連絡先は手元に残らない。次にこちらから声をかける手段がないままだ。並べ替えた先頭投稿を、次の行動——コメント、DM、リスト化——につなげる仕組みがあって初めて、この機能は売上に変わる。ここから先が、SUICSの本題になる。
先に潰す誤解:並び替えは「見た目」ではなく「導線」の話
ここを取り違えると、設計ごとズレる。だから3設計より先に書く。
グリッド並び替えと聞くと、多くの人は「プロフィールの見た目を綺麗にする機能」だと受け取る。色味を揃える、余白を意識する、市松模様に並べる——たしかにそういう使い方もできる。けれど、見た目を整えることそのものは、売上を1円も増やさない。綺麗なプロフィールを見て「素敵だな」と思った人が、そのまま何もせず閉じていくのを、私は何度も見てきた。
並び替えで本当に設計すべきは、見た目ではなく「先頭で人をどこへ運ぶか」だ。初めて訪れた人の視線は、上から順に落ちていく。その最初の数枚で「何屋か」を理解させ、「信頼できそう」と感じさせ、そして「ここにコメントすればいい」という次の一歩を示す。順番を、フォローと会話が生まれる導線として組む。これが並び替えの本体になる。
その足を「フォロー・コメント・DM・リスト」に変えるのは、先頭に置く投稿の中身と、その後ろの動線。
並べ替えて満足すると、綺麗なプロフィールが素通りされ続ける。
プロフィールのリンクを踏ませる導線そのものが弱っている件は「プロフのリンク」はもう踏まれないで書いたとおりだ。人はリンクを踏んで別サイトへ移動するより、その場でコメントやメッセージを送るほうを選ぶ。だから並び替えた先頭投稿の「その後」に置くべきは、外部リンクではなく、コメント→DMで会話が始まる仕掛けになる。先日書いたプロフィールの営業時間バナーと同じで、2026年の集客は「見つけてもらう入口」がどんどん増えている。増えた入口の一つひとつを、DMという出口につなげておくことが、取りこぼしを止める設計の本体だ。
「リスト」まで運ぶ動線
先頭を「資産」に変える3つの並べ替え設計
前提を揃えたうえで、実際に手を動かす3つを書く。どれも大がかりな仕組みではなく、今週プロフィールを開けば整えられる準備だ。新しい投稿を量産する話ではなく、「今ある投稿の順番を変えるだけ」で始められる。
並べ方の型はシンプルで、1枚目に「何を提供している店か」が一目で伝わる主役の写真、2枚目に「お客様の声・実績・ビフォーアフター」など信頼が伝わる1枚、3枚目に「今のおすすめ・季節限定・キャンペーン」を置く。冒頭のパン屋の3枚が、まさにこの型だった。断面写真(何屋か)、朝の店内(雰囲気=信頼)、黒板のおすすめ(今の推し)。この3枚が揃っているだけで、フォローの判断が数秒で終わる。
大事なのは、この3枚を「投稿した日付」ではなく「見せたい順」で並べること。今までは新しい告知投稿を上げるたびに、この3枚が下へ押し出されていた。並び替えなら、告知は告知として投稿しつつ、先頭3枚は看板として固定したまま保てる。
時系列任せで埋もれていた「看板の1枚」が、常に先頭に立つ。
やることは、先頭に置いた投稿のキャプションに一言添えるだけ。たとえば3枚目の「今のおすすめ」投稿に「詳しいメニューが欲しい方は『メニュー』とコメント」と書いておく。コメントが入ったら、自動DMでおすすめの詳細や予約の案内を返す。並び替えでいちばん見られる場所に、いちばん反応が取れる投稿を置く——この掛け算が効く。今まで下に埋もれていたコメント誘導型の投稿を、意図的に先頭へ持ってこられるようになった、と考えると分かりやすい。
コメントを起点に自動DMを組む設計そのものは、コメント→自動DMの会話型コマースで書いた考え方がそのまま使える。グリッド並び替えは、その入口に人を運ぶ「蛇口の位置」を、自分で決められるようにしてくれる機能だ。
フォローで止まっていた人が、コメント→DMで会話に進む。
6枠の使い方は、Design 01の看板3枚に加えて、残り3枠を「入口の投稿」で埋めるのがおすすめだ。たとえば、来店予約の入口、特典プレゼントの入口、よくある質問への回答——それぞれコメント→自動DMにつないでおく。毎日ストーリーズやリールを上げる店ほど、通常の投稿はどんどん流れていくが、この6枠だけは導線として崩れずに残り続ける。
月額のInstagram Plusに入るかどうかは、プロフィールの訪問がそれなりにある店なら検討する価値がある。訪問者が多いほど、動かない6枠の入口が効いてくる。逆に訪問がまだ少ない段階なら、まずは無料でできるDesign 01・02を先にやるのが順番だ。
看板と入口を上部に固定し、通常投稿はその下で流していける。
初訪問者の視線が最初に落ちる、
「入口の場所」を、自分で決められるようになった。
今すぐやるべき店・まだ急がなくていい店
125社を見てきた立場で、正直に線を引く。グリッド並び替えは、全店が今日から作り込む機能ではない。
今すぐやるべきなのは、すでにプロフィールがそれなりに見られている店だ。投稿はしているのにフォローやDMが伸び悩んでいる、という状態なら、先頭3枚を看板に組み替えるだけで数字が動く可能性が高い。訪問はあるのに入口が時系列任せで埋もれている、というのが取りこぼしの典型パターンだからだ。この層は、今週30分でDesign 01・02を仕込む価値がある。
まだ急がなくていいのは、そもそもプロフィールの訪問がほとんどない状態の店だ。並び替えは「訪問した人」の視線を設計する機能なので、訪問者がゼロに近ければ、先にやることは投稿と発見の設計のほうにある。Instagram自動DMの「1人24時間1通」制限のような2026年の配信ルールを踏まえた土台づくりが、この場合は先だ。順番を間違えると、先頭は立派なのに人が来ない状態になる。
「並べる」ところまでは、Instagramがやってくれる
ここまで書いてきて、たぶん伝わったと思う。グリッド並び替えそのものは、Instagramが用意してくれた小さな自由だ。長押ししてドラッグすれば、見せたい投稿を先頭に持ってこられる。そこに、難しい操作はほとんどない。
差がつくのは、その先だ。先頭に「フォローと会話が生まれる導線」を組んでいる店と、ただ見た目を綺麗に並べただけの店。同じように並び替えても、前者はフォローとリストが積み上がり、後者は「素敵なプロフィール」と思われて閉じられていく。数字は動いているように見えるのに、売上は変わらない。あの火曜のパン屋のように、先頭3枚で「行きたい」と思わせたうえで、そこにコメントの入口があれば、私はコメントして、そのお店とのやり取りが残っていたはずだ。
だから順番はこうなる。並べ替えはInstagramに任せる。その先の「拾う仕組み」を、自分の側で先に用意しておく。全ユーザーへの展開が広がっている今が、その準備にちょうどいいタイミングだ。
あのパン屋が、もし先頭にコメント入口を置いていたら
冒頭の話に戻る。私が3秒でフォローを決めたパン屋は、先頭3枚が良かった。だからフォローはした。でも、そのあと私がしたことは、何もない。ただフォロワーが一人増えただけで、店側から見れば、私が誰で、いつ来る気があるのかは分からないままだ。
もしあの店の3枚目のおすすめ投稿に「本日のパンリストが欲しい方は『パン』とコメント」と書いてあったら、私はコメントして、その店とのDMが残っていたはずだ。次の週末、パンを買いに行こうと思ったとき、真っ先に思い出す店になっていた。先頭3枚でフォローが決まり、そこに入口があるかないかで、次があるかどうかが決まる。
グリッド並び替えが自分のアカウントで使えるかどうかは、順次広がっている最中だ。ただ、使えるようになったときに、先頭を「看板」として組み、そこに「入口」を仕込んでおくかどうかは、今日決められる。今週、自分のプロフィールを一度お客さんの目で開いてみて、上の3枚だけで「何屋で、行きたくて、どう動けばいいか」が伝わるか、確かめてみてほしい。