検証用アカウントで、見たことのない画面が出た
6月の半ば、新しいクライアント案件の設計前に、検証用のManyChatアカウントでAI意図認識の設定画面を開いた。いつもの手順のはずだった。ところが、設定パネルの代わりに表示されたのは、見たことのないアップグレード画面。「AI機能はアドオンです。月29ドル」。
一瞬、操作を間違えたかと思った。去年まで、AI返信もAI意図認識も、Proプランに入っていれば普通に触れた機能だ。それが2026年3月の料金再編で、AI機能まるごとが本体から切り離され、月29ドルの別売りアドオンになっていた。
つまり「ManyChatを契約していればAIも使える」という前提は、もう成立しない。AIを使いたければ、Pro本体の料金にもう一段、29ドルが乗る。この変化に気づかないまま運用している事業者と、気づかないまま見積もりを立てている導入検討者が、いま同時に発生している。
125社の構築を通して見てきた立場から言うと、この29ドルは「全員が払うべき料金」ではない。払う価値がある業種と、キーワード分岐で十分な業種が、はっきり分かれる。今日はその切り分けを、判断フローまで含めて書いていく。
2026年3月の再編で、何がどう変わったのか
まず事実関係の整理から。2026年3月のManyChat料金再編は、2つの変更が同時に走った。1つ目は無料プランの縮小で、管理できるコンタクトが月25人までになったこと。これは「ManyChat無料プラン実質終了」の記事で書いた通りだ。
2つ目が今日の本題。AI機能群がProプランから分離され、「Manychat AI」という月29ドル固定のアドオンになった。分離されたのは主に3つ。ユーザーが自由文で送ってきたメッセージの意図を判定して適切なフローに振り分ける「AI意図認識」、フロー内で会話らしい応答を組み込む「AIステップ」、フロー設計を提案してくれる「ビルダーアシスタント」。DM自動化の頭脳にあたる部分が、まとめて別料金になった。
注目してほしいのは金額のバランスだ。Pro本体はリストが小さければ月15ドル程度から始まるのに、AIアドオンはリスト規模に関係なく29ドル固定。小規模アカウントほど「本体よりアドオンの方が高い」という逆転が起きる。フォロワー数千人の個人事業主にとって、この29ドルは軽い判断ではない。
背景も押さえておきたい。AI機能の裏側では、メッセージが届くたびに大規模言語モデルのAPIが動いていて、ManyChat側には使われるほど原価がかかる。定額の本体料金に含めたままだと、AIを使わないユーザーがAIヘビーユーザーの原価を負担する構図になる。だから切り離す。この「AIは別課金」の流れはManyChatに限らず、2026年のSaaS全体で同時に進んでいる再編で、今後ほかのツールでも同じ判断を迫られる場面が増えるはずだ。
だからこそ、「AIが使えた方が良さそうだから」という気分で払うのではなく、自分のDMにAIが本当に必要かを数字で見てから決めるべきだ。その判断を業種別に切り分けたのが、次のセクションになる。
125社の現場から。29ドルを払う価値がある業種
構築してきた125社を思い返しながら、「AIアドオンがあった方が成果に直結する業種」を挙げると、共通点は1つに絞られる。お客さんからのDMが「自由文の質問」で届く業種だ。
逆に言えば、この3タイプに当てはまらないなら、29ドルは急いで払わなくていい。特典配布やクーポン配布が中心の飲食店・キャンペーン型の運用は、キーワード分岐だけで9割成立する。「プレゼント」とコメントされたら特典DMを送る、「クーポン」と送られたらクーポンを返す。この動線に自由文は登場しないから、AIの出番がそもそもない。実際、125社のうち特典配布型で構築したアカウントは、AI機能なしで開封率・回収率とも目標を満たしている。
リスト構築が主目的の運用も同じだ。コメントからDMへ誘導してリードフォームに繋ぐ流れは、全部ルールベースで組める。AI意図認識の設計を深掘りした「AI意図認識とは?取りこぼしを防ぐ3つの再設定」で書いた内容も、前提としてこの切り分けの上に乗る。
「AIが好きかどうか」ではなく、
「自由文の質問が月に何件来るか」。
払うと決める前に。3ステップの棚卸し手順
フロー図を実際に回すための手順も書いておく。やることは3つ、所要時間は30分程度だ。
ステップ1は、直近30日の受信DMをさかのぼって開くこと。Instagramの受信箱でもManyChatのLive Chat画面でもいい。1件ずつ「定型で返せた質問」と「自由文で個別対応が必要だった質問」に分けて数える。ここをやらずに判断している事業者が本当に多い。
ステップ2は、自由文の質問のうち「予約・購入の直前に届いたもの」を数えること。たとえば施術の予約可否、商品のサイズ確認、講座の受講条件。この件数×平均単価が、いま取りこぼしている可能性のある売上の上限になる。
実際にこの棚卸しをやると、体感と数字のずれに気づくことが多い。以前、構築後のフォローで整体院のアカウントのDMを一緒に数えたとき、オーナーの体感では「質問なんてほとんど来ない」だったのに、実際には30日で自由文の症状相談が34件あり、うち21件が未返信のまま埋もれていた。逆に、アパレル系のアカウントでは「質問が多い気がする」という体感に対して、数えたら9割が「クーポン」の定型コメントだったこともある。体感は当てにならない。数えた件数だけが判断材料になる。
ステップ3は、その金額と29ドル(約4,400円)を並べること。月に数万円の取りこぼしが見えるならアドオンは即決でいい。数件しかないなら、テンプレ返信の整備と通知の見直しが先だ。順番はいつも「ルールベースの設計を先に固めて、AIは足りない部分にだけ足す」。AI返信の設計手順は「ManyChatに『AI返信』が来た|知識ベース設計の3手順」に書いた通りで、知識ベースが整っていないままアドオンだけ課金しても、精度は出ない。
もう1つ、既存ユーザーへの注意も添えておく。再編前からAI機能を使っていたアカウントは、いつの間にかアドオン課金の対象になっているか、逆にAI機能が止まったまま動線が穴あきになっているか、どちらかの状態になっている可能性がある。請求画面と、AI意図認識を使っていたフローの動作確認は、今月中に一度やっておいた方がいい。
「自分の業種はどっちか」を一緒に見てほしい場合
ここまでの判断フローは、自分で回せるように書いたつもりだ。ただ、実際のDMを見ながら「これは自由文としてカウントすべきか」「この動線ならキーワード分岐で組めるか」を切り分ける作業は、構築経験がないと迷う場面が多いのも事実。とくに、これからManyChatを導入する段階の人は、AIアドオン込みで月額いくらの運用になるのか、設計と一緒に見積もった方が安全だ。