土曜の朝、スマホの「ファイル」アプリに、開いていない特典PDFが19個あった
9月5日、土曜の朝。駅前のカフェで、スマホの空き容量が足りないという表示が出たので「ファイル」アプリを開いて整理を始めた。ダウンロードフォルダの中に、PDFが並んでいた。「初回限定クーポン.pdf」「セルフケア5つのチェックリスト.pdf」「秋メニュー表.pdf」「無料相談の流れ.pdf」。数えたら19個。どれも、この半年でInstagramのコメント欄に合言葉を書いて、届いたDMのリンクを踏んで、ドライブの画面からダウンロードしたものだった。
開いた記憶があるのは3個だった。残りの16個は、リンクを踏んでドライブのプレビューが開き、「ダウンロード」を押したところで満足して、そのまま閉じている。そして19個のうち、その後お店に行ったのは1軒だけだった。自分は仕事柄、他人の自動DMを片っ端から受け取っているので極端な例ではあるが、受け取る側の動きとしては珍しくない。特典は届いている。ただ、届いた先が「スマホの奥のフォルダ」で、届いたあとに何も起きていない。
同じ週、ManyChatのFlow BuilderにPDFを直接添付するブロックが使えるようになっていることを、あらためて構築中のお客さんの画面で確認した。リンクを踏ませず、DMの中でそのままPDFが開く。これは配布の手間が減る話ではなく、「16個の開かれないPDF」を作り続けるか、それとも受け取った人が次に動く設計に組み替えるかの分かれ道だと思った。今日は、この機能で何が変わるかを整理したうえで、リンク配布からPDF直送へ組み替えるときの3つの設計を書いていく。
何が変わったか——「リンクを渡す」から「ファイルそのものを渡す」へ
まず事実を、ManyChatの公式発表とヘルプの範囲でそろえる。Instagram DMがファイル添付に対応したことを受けて、ManyChatのFlow Builderに、PDFをそのままDMに添付できるコンテンツブロックが加わった。コメント、DMのキーワード、ストーリーズへの返信、フォローといった既存のトリガーから、リンクを経由せずにPDFを送れる。受け取った側はInstagramのDM画面の中でプレビューして開ける。容量にはMeta側の仕様による上限があり、25MB前後と案内されているので、写真を多く載せたメニュー表は軽くしてから使うほうがいい。細かい仕様は変わる可能性があるので、使う前に公式ヘルプで確認したほうがいい。
これまでの特典配布は「ドライブやLPのリンクをDMに貼る」が定番だった。この方式には3つの離脱があった。1つ目は、リンクが踏まれないこと。Instagramは外部リンクを開く前に確認画面を挟むし、知らない店からのリンクは踏まない人が一定数いる。2つ目は、怪しまれること。DMにURLが並ぶと、それだけで詐欺の文面と見分けがつきにくい。3つ目は、外に出て戻らないこと。ブラウザに飛んだ人は、Instagramに戻ってこない。「プロフのリンクはもう踏まれない」 で書いた話が、DMの中でも同じように起きていた。
PDF直送は、この3つをまとめて消す。踏むリンクがなく、URLが並ばず、Instagramの外に出ない。ここまでは機能の話で、使えばそのまま手に入る。ただ、125社の構築で見てきた限り、配布が楽になるほど「渡して終わり」が増える。冒頭の16個がそれだ。受け取った人がPDFを開いた瞬間、店との会話は一度終わる。その先に予約や来店が起きるかどうかは、機能ではなく設計で決まる。
リンク配布をやめて予約につなげる、3つの設計
組み替えるときに見るのは、PDFの中身、PDFの前後、そして今あるリンク配布のどれを置き換えるかの3か所だ。順番に書く。
「渡したあと」を
設計する時間に回す。
今週やること——今のDMフローのリンクを数えて、1本だけPDFに置き換える
やることは3つで、合計1時間ほどで終わる。1つ目は、ManyChatの今のフローを開いて、DMに貼っているリンクを数える。うちの場合は特典の受け取りリンク、メニュー表、予約フォーム、LINE登録の4本だった。それぞれに「読むだけ」か「外で完了させる」かの印を付ける。2つ目は、「読むだけ」の中から、いちばん送っている回数が多い1本を選び、PDFにする。既存のチラシPDFがあるなら、1ページ目だけを作り直して、次にやることの1行を入れる。3つ目は、そのPDFの前に1問、後に1通を足して、タグを3段で付ける設定を入れる。全部を一気に変えないほうがいい。1本を1週間動かして、返信の数を見てから、2本目に進む。
1ページ目に置く1行は、店ごとに変わるが、形は次のようなもので十分だ。
「返信してください」の理由を、必ず1つ添える。理由がないと返信は来ない。「空き枠を送る」「あなた向けの順番で案内する」「番号を送ると詳しい写真を返す」。相手が返すことで相手が得をする形にしておくと、返信は自然に増える。そして返信が来たとき、その先は「Share to DM解禁」 で書いた分岐と同じで、答えに応じてタグを分け、人が返すべきところは人が返す。自動で渡すのはPDFまで、予約の最後のひと押しは店主の言葉で、という線引きが、125社の中でいちばん予約に結びついていた。
最後に:配布が楽になるほど、「渡したあと」が店の差になる
カフェで見つけた19個のPDFは、どれも作った人が時間をかけたものだった。チェックリストの項目を考え、メニューの写真を撮り、デザインを整えてPDFにして、ManyChatに組んで配っている。その手間が、スマホの奥のフォルダで止まっている。PDF直送は、この配る部分の手間と離脱を消してくれる。ただ、消えた分の時間をどこに回すかは、店主が決めることだ。
1ページ目の1行、前の1問、後の1通、3段のタグ。どれも大きな作業ではない。ただ、この4つがあるかないかで、PDFは「保存されて終わるチラシ」にも「会話を再開させる案内係」にもなる。今週、フローのリンクを数えて、1本だけ置き換えてみてほしい。返信が1通でも返ってきたら、その相手は、フォルダの奥ではなく、あなたのDMの中にいる。