新幹線の隣の席で、10枚のカルーセルを最後までスワイプする人を見ていた
先週、博多から広島へ向かう新幹線の中で、隣の席の女性がずっとInstagramを触っていた。何気なく画面が視界に入ってきて、ある投稿で指が止まった。10枚くらいのカルーセルを、1枚、また1枚と、最後まで丁寧にスワイプしていたのだ。飲食店のメニュー紹介らしき投稿だった。
面白かったのは、彼女が最後の1枚までたどり着いたのに、そこで指が止まって、画面をじっと見たまま数秒フリーズしたこと。たぶん「で、どうやって予約するんだっけ」と探していた。結局、彼女はキャプションを開かずに、次の投稿へスワイプしていった。10枚全部見せたのに、最後の一歩で客を逃している。あの店のアカウントは、それに気づいていない。
この「最後まで見たのに、行き先が分からない」問題に、2026年のInstagramがひとつ答えを出した。カルーセルが、1枚のスライドごとに別々のキャプションを付けられるようになったのだ。今日はこの新仕様を、ManyChatを125社に組んできた立場から、集客の道具として使い切る3つの設計に落として書く。
「1投稿=1キャプション」の常識が終わった
これまでのカルーセルは、何枚スライドを並べても、キャプションは投稿全体でひとつだけだった。20枚の画像を作っても、説明文は1本。だから作り手は、全スライドをまとめて説明する長い文章を1つ書くか、もしくはキャプションをほぼ空にして画像だけで見せるか、どちらかに寄っていた。
2026年の新仕様では、スライド1枚ごとに個別のキャプションを設定できるようになった。1枚目には1枚目の文、5枚目には5枚目の文、と別々に載せられる。あわせてカルーセルの上限も最大20枚まで拡大した。1つの投稿の中で、複数の話題・複数の訴求を、スライド単位で切り替えられる箱に変わったということだ。
なぜこれが集客に効くのか。Instagramは今、投稿にどれだけ長く滞在したか(スワイプの深さ・1枚あたりの視聴時間)を評価の軸にしている。スライドごとに読ませる文があると、人は1枚ずつ止まって読む。滞在が伸びる。滞在が伸びると、おすすめ枠に乗りやすくなる。そして最後まで見た人ほど、行動を起こす確率が高い。「見せる」だけで終わっていたカルーセルが、「読ませて、動かす」導線に化ける。ここがManyChatの自動DMと噛み合う。
この「最後の一歩で客を逃さない」という発想は、以前書いた コメント→自動DMの会話型コマース の続きにあたる。プロフィールのリンクを踏ませるのではなく、投稿の中で会話を始めさせる。その入口を、今度はスライド単位で複数持てるようになった、という話だ。
スライド別キャプションを"複数の入口"に変える3設計
ここから、実際に組める3つの設計を書く。どれもManyChatのコメント→自動DM(特定のキーワードにコメントが来たらDMを自動で返す仕組み)と組み合わせる前提で、今週すぐ試せる形にした。
スライドごとに入口を持つ「導線の束」へ。
1投稿で拾える客の数が、変わる。
やりすぎると逆効果になる、という注意点
入口を増やせるからといって、20枚全部にコメント誘導を貼るのは逆効果になる。読者は「毎スライド営業されている」と感じると、途中で離脱する。滞在時間を伸ばしたいのに、途中離脱を増やしてしまえば本末転倒だ。入口は1投稿で2〜3本まで。残りのスライドは、あくまで読ませる中身に徹する。
もうひとつ。自動DMのキーワードを雑に大量設定すると、Instagram側に「ノイズが多いアカウント」と見なされ、かえってリーチが抑えられることがある。このリスクは以前 Instagram「ノイズ比率」でシャドウ抑制される時代 に書いた。スライド別キャプションで入口を増やすときも、キーワードは絞って、返信は自然な会話に寄せる。この2点を守れば、新仕様は取りこぼしを減らす方向に効いてくれる。
そしてこの変化は、拡散指標そのものが「DM送信数」に寄っている流れとも噛み合う。投稿の中で自然にDMのやり取りが起きるほど、その投稿は伸びやすくなる。背景は Instagram拡散指標が「DM送信数」へ にまとめてある。
「うちの主力投稿を、複数の入口に組み直したい」と思ったら
スライド別キャプションは、機能としては誰でも今日から使える。難しいのは、どのスライドに、どの悩みの、どのキーワードを置くか、という設計の部分だ。ここを外すと、入口を増やしたのに反応が散らばって、かえって管理が煩雑になる。逆に、投稿の内容と読者の悩みを地図にして設計すれば、1投稿が静かにリストを積み上げる装置になる。
SUICSでは、Instagramのカルーセルとコメント→自動DMを、1本の動線として設計から組んでいる。既存の主力投稿を棚卸しして、「途中で拾える入口」「最後で拾える入口」「悩み別に受ける入口」を仕分けし、ManyChat側のキーワード分岐と自動DMまで一気通貫でお渡しする。125社に組んできた中で見えた、やりすぎないラインの引き方も含めて設計する。
フォロワーは増えているのに問い合わせにつながらない、投稿は見られているのに次の一歩が起きない——そういう状態なら、投稿を作り直す前に、まず動線の相談から始めてほしい。
まとめ:カルーセルは「導線の束」になった
1投稿1キャプションの時代、カルーセルは「最後まで見せて、あとは察してもらう」紙芝居だった。スライド別キャプションと20枚への拡張で、カルーセルは1枚ごとに入口を持てる「導線の束」に変わった。途中で拾う、最後で拾う、悩み別で拾う——3つの入口を、1つの投稿の中に同居させられる。
あの新幹線で見た飲食店のアカウントも、最後の1枚に「予約とコメントしてください」の一言を足すだけで、あの女性を逃さずに済んだかもしれない。新機能を追いかけるのではなく、目の前の1投稿の「行き先」を1つ増やす。そこから始めれば十分だ。今週は、いちばん見られている主力カルーセルを1本選んで、CTAスライドを1枚足すところから手をつけてみてほしい。