土曜の朝、改札の前で友達から1本のリールが送られてきた
5月のある土曜、朝の改札を抜けたところでスマホが震えた。学生時代の友人からのInstagramのDMで、メッセージは一言「これ、めちゃくちゃ分かる。見て」。添えられていたのは、知らないカフェ店主が淹れ方を実演している1分のリールだった。立ち止まってその場で最後まで観て、自分も別の友人に転送した。電車に乗るまでの3分で、僕はそのアカウントに何の「いいね」も押していない。でも、確実に拡散の一部になっていた。
家に帰って自分のスマホの行動を振り返ってみた。気づいたのは、ここ数ヶ月、自分はほとんど「いいね」を押していないという事実だった。代わりにやっているのは、面白いと思った投稿を友達のDMに送ること。料理の動画は妻に、仕事の話は同業の知人に、ネタ系は学生時代のグループに。「いいね」は親指1本の作業、「送る」は相手を思い浮かべる行為。後者のほうが、自分の中ではよっぽど重い1票になっていた。
そこから2026年のリール評価の仕組みを調べ直して、確信した。Instagram自身が、僕と同じ判断をし始めていた。拡散を決める一番の物差しが「いいね」から「DMで誰かに送られた数」へ、はっきり移っていたのだ。125社のManyChat構築でDMを触り続けてきた立場から、この変化が個人事業主・店舗オーナーにとって何を意味するのか、正直に書いておきたい。
拡散の物差しが入れ替わった。「いいね」は最下位に落ちた
2026年のリールの評価順位は、海外の解析や運用者の検証でほぼ共通の並びが見えてきている。上から、①DM共有(友達に送られる)②視聴完了率(最後まで観られる)③保存 ④コメント ⑤ストーリー共有 ⑥いいね。長らく主役だった「いいね」が、6つのシグナルの最下位に置かれた格好だ。
どれくらい差があるのか。海外の解析では、DM共有1回が、いいね約15回分の配信スコアに相当するという見方が出ている。正確な係数はInstagramが公開していないので参考値だが、桁が違うという感覚は現場の実感とも一致する。フォロワーの誰かが投稿を1人に送るたびに、その投稿は「親しい人に勧めるだけの価値があった」と機械に判定され、発見タブやおすすめへの露出が一段押し上げられる。逆に、いいねが何百ついても、誰にも送られていない投稿は伸び止まりやすい。
もう一つ大きな変更がある。リールの上限が最長20分まで延びたことだ。15秒の使い捨てではなく、チュートリアル・舞台裏・ミニドキュメンタリーのような「最後まで見せる長尺」が発見タブで優遇されるようになった。①のDM共有と②の視聴完了率が上位に来たことと、この20分対応は同じ方向を向いている。Instagramは「短く目を引く投稿」から「人に勧めたくなる、最後まで観られる投稿」へ、評価の重心を移したということだ。
この変化は、フォロワー数やいいね数を追いかけてきた人ほど、足元をすくわれる。数字の見栄えは良くても、売上に直結する「人に勧められる力」を測ってこなかったからだ。ここは 5月のアルゴリズム改変(関係性重視)の記事 で書いた「関係性」の話の、さらに具体的な続きにあたる。
なぜ「送られる」がそこまで強いのか。機械が信頼を読みにきている
いいねと保存とDM共有は、見た目どれも「反応」だが、機械から見た意味はまったく違う。いいねは、自分の世界で完結する反応だ。保存は「あとで自分が見返す」という自分向けの行為。それに対してDM共有だけは、相手の時間を1人分使わせる行為になる。「これ、あなたに見てほしい」と特定の誰かを名指しして送る。受け取った側も、知らない他人ではなく友達からの推薦として観る。
つまりDM共有が起きた瞬間、Instagramは「この投稿は、人が自分の信用を賭けて人に勧めた」と読み取れる。広告でも、フォロワー数でもない、いちばん偽造しにくい信頼のシグナルだ。だから機械はそれを最重要の物差しに据えた。これは口コミが昔から最強の集客だった理由を、そのままアルゴリズムに翻訳したものだと考えると腑に落ちる。
個人事業主・店舗オーナーにとっての意味は、はっきりしている。これからの投稿は「多くの人にうっすら良いと思われる」より、「特定の1人が、別の特定の1人に送りたくなる」ほうが圧倒的に強い。万人受けを狙って角を丸めた投稿は、誰のDMにも乗らない。SUICSが繰り返し書いてきたN1(たった1人に深く刺す)という設計思想が、2026年のアルゴリズム上でそのまま正解になったということだ。
DMで送られる投稿の作り方、現場で効いた3つの型
「送りたくなる」は感覚論で終わらせず、型に落とせる。125社の運用と自分のアカウントで実際に転送が増えた投稿には、共通する3つのパターンがあった。
「DMに人を流す」方向へ変わった。
だから今いちばん効くのは、
送られた先のDMを作っておくことだ。
送られた先で、取りこぼしていないか。受け皿のDM設計が今いちばん効く
ここからが本題だ。投稿が送られて、新しい人があなたのアカウントに辿り着いた。その瞬間に何が起きるか。多くの個人事業主のアカウントでは、せっかく来た人が、プロフィールを眺めて、何もせずに去っていく。これが2026年の最大の取りこぼしだ。
拡散の起点(DM共有)が強くなったということは、見方を変えれば「DMという場所に、今までより多くの人が流れ込んでくる」ということでもある。Instagram自身がDMへ人を運ぶ設計に変わったのだから、その着地点を整えていない手はない。投稿に「気になる人はDMで『資料』と送ってください」の一言を置き、送られてきた瞬間に自動で正しい情報とリンクを返す。この受け皿がManyChatのDM自動応答だ。拡散して終わりではなく、拡散→DM着地→リスト化までを1本の線でつなぐ。
ここを押さえると、フォロワー数という借り物の数字ではなく、自分から連絡できるDMリストという資産が毎日積み上がっていく。フォロワーとリストの違い、そしてリストが売上に変わる構造は 「フォロワー1000人より大事なDMリスト100人の作り方」 で詳しく書いた。フォロー直後の自動あいさつDMを自然に見せる設計は 「フォロー即DMは諸刃の剣」 も合わせて読んでほしい。
注意したいのは、受け皿を雑に作ると逆効果になることだ。送られてきた人にいきなり売り込むと、温度の高かった見込み客を一発で冷ます。1通目で売らない、名前と文脈を入れる、ほどよい遅延を置く——この設計を外さなければ、DMは「冷たい自動返信」ではなく「ちょうどいい案内係」になる。
今日からやること、3つだけ
長くなったので、明日からの動きを3つに絞る。1つ目、いいね数を成果指標から外し、シェア(DM送信)数を見る。Instagramのインサイトで各投稿の「シェア」を確認する習慣に切り替える。2つ目、次の投稿を「特定の1人が、別の1人に送りたくなるか」で作り直す。ターゲットを広げず、顔が浮かぶまで絞る。3つ目、送られてきた人が着地するDMの受け皿を1本だけ用意する。「DMで○○と送ってください」の入口を作り、自動で正しい案内が返る状態にしておく。
「いいね」を集めるゲームは終わった。これからは「送られる投稿」を作り、「送られた先のDM」を整える人が勝つ。投稿という入口と、DMという受け皿。この2つを別々の作業だと思っている間は、拡散の波が来ても水は溜まらない。1本の線でつないだ瞬間に、毎日のリーチが資産に変わり始める。どこから手をつけるか迷ったら、まず受け皿のDM設計から相談してほしい。投稿の改善は自分で回せても、DMの自動導線は一度きちんと組むだけで、毎日休まず働き続けてくれるからだ。