クレジット明細に、AIのサブスクが3つ並んでいた
今月のクレジットカード明細をスクロールしていて、手が止まった。AI関連の月額が、3つ並んでいる。ChatGPT、Claude、Gemini。どれも自分で契約したものだ。理由もある。ChatGPTは画像や音声、Claudeは長文と実装、Geminiは検索まわりが速い——そう思って、なんとなく3つ払い続けていた。
ただ、明細を見ながらふと自問した。「じゃあ、うちの会社の"主役のAI"はどれ?」と聞かれたら、自分は即答できるだろうか。答えは、できなかった。3つとも中途半端に使っていて、どれか1本に軸足を置いている感覚がなかった。
その数日後、その迷いに追い打ちをかけるニュースが来た。OpenAIが7月9日に「ChatGPT Work」を発表し、7月21日には小規模事業者向けのプログラムまで立ち上げた。ClaudeとGeminiに続いて、ChatGPTも「数時間かけて仕事を仕上げるAI社員」になった。これで3社が完全に横並びになった。今日は、この横並びの中で個人事業主が"主役の1本"をどう選ぶかを、Cowork(Claude)で会社を1人回している立場から書いておく。
7月に起きたこと:ChatGPTが「アプリをまたいで働く」側に回った
まず何が起きたのかを整理する。これまでのChatGPTは「質問すると答える」道具だった。今回発表された「ChatGPT Work」は、そこから一歩踏み込んで、SlackやGmail、Googleドライブ、Salesforceといった複数のツールに接続し、数時間かけて一連の作業を自分で進めて"完成品"まで持っていく。スプレッドシート、スライド、レポート、簡単なWebアプリまで仕上げる、という発表だった。
ポイントは2つある。1つは、これが追加料金なしで既存のPlus・Pro・Business・Enterpriseプランに同梱されたこと。今すでにChatGPTに月額を払っている人は、契約はそのままで"社員化"の機能が手に入る形になった。もう1つは、7月21日にOpenAIが小規模事業者向けプログラムを立ち上げ、ChatGPT WorkとCodex(コード生成)の利用者が合計で1,000万人に達したと発表したこと。個人〜小規模事業者を明確に狙いに来た、という合図だ。
この動きは、単発のニュースではない。少し前を振り返ると、Anthropicは6月末にClaude Sonnet 5を出し、上位のOpus 4.8も提供している。Googleは開発者向けイベントで、PCを閉じても24時間動く常駐エージェント「Gemini Spark」や、毎朝の要約を届ける機能を発表した。3社がそろって「モデルの賢さ」だけでなく「何を任せて放っておけるか」で競い始めた。個人事業主から見ると、これは「賢い相棒を1つ選ぶ」話から「どのAIを自分の会社の主役に据えるか」という経営判断に変わったということだ。
昨日の「5つ使い分け」の前に、決めることがある
昨日の記事では、勝っている会社は万能な1本を探さず、平均5つのAIツールを工程ごとに分担させている、という話を書いた(「AIツール5つの組み合わせ」を実例で公開)。この考えは今も変わらない。ただ、5つに分ける前に、順番として先に決めておくべきことがある。それが「主役を1本決める」ことだ。
理由はシンプルで、主役が決まっていないと、5つの使い分けが「バラバラの道具の寄せ集め」になってしまうからだ。毎日いちばん長く触るAI、業務の背骨になるAIを1本決める。そのうえで、残りは工程ごとに脇役として足していく。主役=毎日の8割を任せる本拠地、脇役=特定の工程だけ呼ぶ、という役割分担だ。3社が横並びになった今こそ、この「主役をどこに置くか」の判断が、その後の使い分け全体の土台になる。
ここから、その主役を選ぶための3条件を挙げる。どれも「機能の多さ」や「どれが一番賢いか」ではなく、自分の会社の日々の業務にどれだけ馴染むかを軸にしている。賢さは3社ともすでに実務で困らない水準にあり、そこで悩んでも決まらないからだ。
3社が横並びの今、勝負を分けるのは
「毎日の業務に、どれだけ馴染むか」。
3社を横に置いた、いまの現実的な結論
SUICSの場合、主役はClaude(Cowork)に置いている。会社そのものをClaudeで運営していて、記事の執筆も、ツールの実装も、日々の判断の壁打ちも、その本拠地の中で回している。これは「Claudeが一番賢いから」ではなく、自分がこの3条件を全部満たした本拠地がClaudeだったから、というだけの話だ。人によって答えは変わる。Googleワークスペースでほとんどのやりとりをしているなら主役はGemini側が自然だし、資料の"完成品"を毎日大量に吐き出したい人はChatGPT Workが主役になり得る。
大事なのは、主役を1本に決めたうえで、残り2社を無理に解約しないことだ。主役で8割を回し、リサーチはこっち、画像はこっち、と工程ごとに脇役として2社を呼ぶ。この形にすると、3つ払っていても「なんとなく3つ」ではなく「本拠地1つ+専門職2つ」という説明のつく体制になる。冒頭の明細の迷いは、主役を決めた瞬間に消えた。ChatGPT・Claude・Geminiをどう工程で組むかは、「AIツール5つの組み合わせ」の記事とあわせて読むと、主役決め→工程分担の順で全体像がつながる。
「うちの主役、どれにすべき?」を一緒に決めたいなら
ここまで読んで、「理屈はわかったけど、自分の業務だとどれが主役かは正直まだ判断できない」と感じた人は多いと思う。それは当然で、3条件は自分の1日の業務を棚卸ししないと当てはめられないからだ。逆に言えば、業務の棚卸しさえ済めば、主役は機械的に決まる。
SUICSのAI/DX診断では、まず御社の1日・1週間の業務を洗い出して、「毎日いちばん時間を使っている作業」「今つながっているツール」「自分たちで運用し続けられる範囲」を一緒に整理する。そのうえで、ChatGPT Work・Claude・Geminiのどれを主役に据えるべきかを、この3条件で判定する。導入して終わりではなく、決めた主役で実際に日々の業務が軽くなるところまで並走する。AIを3つ契約しているのに主役が言えない状態は、そのまま毎月の無駄払いになる。ここを整理するだけで、同じ支払いでも効きが変わる。