Notes / Instagram

Instagram DMに「予約送信」と
「99言語翻訳」が来た

2026.07.30

火曜の朝、旅館のDMに英語と中国語が4件たまっていた

7月のある火曜、朝いちばんに担当している温泉旅館のInstagramを開いたら、DMの受信箱に英語と簡体字のメッセージが4件並んでいた。「Do you have a room this weekend?」「ペットは泊まれますか」。前夜21時前後に届いたまま、朝の8時まで一件も返せていなかった。

この旅館の女将さんは、英語も中国語も読めない。夜は接客で手が離せない。翻訳アプリに1件ずつコピーして、訳して、返して、また次を訳して——とやっているうちに、返信は昼過ぎになった。海外からの問い合わせはスピードが命で、返すのが半日遅れれば、その人はもう別の宿を押さえている。実際その週末、4件のうち2件は「もう予約しました」と返ってきた。

この「言葉の壁」と「時間の壁」で海外客を取りこぼす場面を、地方の店舗でいくつも見てきた。ところが2026年7月、Metaはこの2つの壁を正面から崩す機能を、ビジネスプロフィール向けに前面へ押し出した。DMの「予約送信」「99言語の翻訳」だ。

おもしろいのは、この純正機能が広がったことで「ManyChatの自動DMはもう要らないのでは」という声が増えたこと。結論は逆で、純正の手動DMとManyChatの自動DMは、むしろきれいに役割分担できる。今日はその線引きを、明日から使える3つの設計に落として書く。

何が変わったのか——予約送信と99言語翻訳の中身

まず変更点を正確に押さえる。機能そのものは数ヶ月前から一部アカウントで使えていたが、今回のニュースは、Metaが「営業に使う機能」としてこの2つを前面に打ち出し、使えるアカウントを一気に広げたことにある。位置づけが「便利機能」から「業務ツール」へ変わった、と考えるとわかりやすい。

予約送信は、DMの送信ボタンを長押しすると日時を指定できる。夜に思いついた返信を、相手が読みやすい翌朝に届ける、といった使い方ができる。翻訳は、受け取ったメッセージを長押しして「Translate」を選ぶと、原文の下に訳文が出る。対応は99言語。相手の言語に合わせて自動で訳す設定も用意されている。どちらもビジネスプロフィールのDM画面から、追加費用なしで使える。

ここが今日の話の起点だ。純正のこの2つは、あくまで「人が1対1で返す場面」を速く・楽にする道具である。投稿への大量コメントを24時間さばいたり、条件で分岐して自動でリスト化したりする機能ではない。つまり、ManyChatが得意な「入口の取りこぼしゼロ・全員を自動でリスト化」とは守備範囲が違う。競合ではなく、担当が違う。ここを取り違えると、道具選びを丸ごと間違える。

純正の予約・翻訳は「人が返す1通」を強くする。
ManyChatの自動DMは「返しきれない入口」を機械が拾う。
2026年は、この2つを分けて設計する年になる。

海外客も取りこぼさない、使い分け3設計

ここから、純正の予約・翻訳とManyChatの自動DMを、どう役割分担させるかを3つの設計で書く。順番どおりに読むと、自分の店の「どこが詰まっているか」も見えてくるはずだ。

Design 01
翻訳DMは「海外客の一次対応」を人がやる窓にする
対象:観光地の宿・飲食・体験施設・越境EC
99言語翻訳は、海外客との1対1対応をまるごと受信箱の中で完結させる機能だ。まず海外からの問い合わせが来る店は、DMの初動をスタッフや店主が翻訳機能で直接返す運用に切り替える。翻訳アプリへのコピーと貼り付けの往復が消えるだけで、返信までの時間は半分以下になる。冒頭の旅館も、この運用にしてから海外予約の初回返信が翌日昼から当日朝に前倒しできた。
ここでの肝は、翻訳を前提に自分が送る側の日本語も短く区切ること。長い一文は訳が崩れやすい。「空室あります。2名1泊2食で20,000円です。ご予約はこちらのフォームから。」のように、一文一情報で書くと、99言語のどれに訳されても意味が通る。翻訳は万能ではなく、こちらの書き方で精度が変わる。
使いどころ
海外客の初回対応:翻訳アプリの往復 → 受信箱で完結(返信時間が半減)
Design 02
予約送信で「営業時間外の問い合わせ」を翌朝の一通に変える
対象:飲食店・美容室・サロン・個人事業主
予約送信がいちばん効くのは、営業時間外に来る問い合わせだ。飲食店や美容室、個人事業主のDMは、夜や早朝に届くことが多い。その場で返せなくても、内容だけ確認して返信を書き、翌朝の開店前に届く時間を指定して予約しておく。相手は「朝いちで丁寧な返事が来た」と感じ、こちらは自分のペースで書ける。深夜に眠い頭で雑な即レスをするより、返信の質が上がる。
予約送信は、店主を「即レスしないと失礼」という思い込みから解放する道具でもある。さらに、営業時間・アクセス・予約方法といった定番の質問は、返信の下書きをメモアプリに数パターン用意しておき、予約送信に流し込む。手動でありながら、半自動のような速さで、しかも人の言葉で返せる。
使いどころ
時間外の問い合わせ:深夜の雑な即レス → 翌朝に届く丁寧な予約DM
Design 03
入口はManyChatの自動DMに任せ、1対1は純正の手動でしめる
対象:投稿やコメントの反応は多いが対応が追いつかない人
ここが今日の核心になる。純正の予約・翻訳は「人が1件ずつ返す」機能なので、届く母数が増えるほど人の手が追いつかなくなる。投稿に「詳細」とコメントした全員、広告から流れてきた全員に、24時間いつでも自動で一次返信を返してリスト化するのは、ManyChatの自動DMの担当だ。役割分担はこうなる。入口(コメント・投稿・広告 → 自動DMで全員に一次返信&リスト化)は機械が担い、そのあとの個別のやり取り(見積もり・予約確定・海外客の細かい対応)は、純正の予約送信と翻訳で人が担う。
機械が「取りこぼしゼロ」を作り、人が「一人ひとりの温度」を足す。この二層に分けると、入口の数と対応の質を同時に取れる。125社を構築してきて分かったのは、自動DMだけでも純正の手動だけでも片手落ちになるということ。数をさばくのは機械、温度を出すのは人。この線引きさえ決めておけば、一人運営でも海外客まで取りこぼさない導線がつくれる。
使いどころ
入口=機械が全員をリスト化/1対1=人が予約送信・翻訳で対応
DM Two-Layer Design
DMの二層設計|機械が担う層と人が担う層
TWO LAYERS OF DM 入口 / 投稿コメント・広告・プロフィール 反応した人が、まだ「ただの通りすがり」の状態 MACHINE 機械が担う層 / ManyChat 自動DM 24時間・全員に一次返信・条件分岐で自動リスト化 HUMAN 人が担う層 / 純正の予約送信・99言語翻訳 見積もり・予約確定・海外客の1対1対応を、質を上げて返す 入口の「数」と 対応の「質」を、両立できる 機械で取りこぼしゼロ、人で温度を足す

「純正が出たからManyChatは解約」で失敗する理由

今回の機能が広がったあと、「純正で足りるからツールは解約する」と動く人が一定数出る。だが、純正の予約・翻訳はあくまで受信箱を開いて人が操作する機能で、投稿への大量コメントを24時間さばいたり、条件で分岐して自動でリスト化したりはできない。逆にManyChatは、海外客との細やかな1対1の翻訳ラリーには向かない。片方だけに寄せると、必ずどこかで取りこぼす。

判断の順番はシンプルにできる。まず「入口で何人取りこぼしているか」を見る。投稿には反応があるのにDMや予約に繋がっていないなら、機械(自動DM)の層が足りていない。逆に、DMには来るのに返しきれず、時間や言葉で落としているなら、人(予約・翻訳)の層の設計が甘い。自分の詰まりがどちらの層かを見てから、道具を足す。ここを逆にすると、要らない機能にお金と時間を使うことになる。自動DMの母数設計は 「Instagram自動DMが1人24時間1通制限になった話」 記事、初回DMを無駄撃ちしない考え方は 「新規フォロワーに自動あいさつDM解禁と週1通制限」 記事も参照してほしい。

純正機能が増えるほど、皮肉なことに「どこを機械に任せ、どこを人が持つか」という設計そのものの価値が上がる。道具は誰でも同じものが使える時代だからこそ、二層の線引きを描けるかどうかで差がつく。機能のニュースが出るたびに右往左往するのではなく、自分のDM導線を「機械の層」と「人の層」に一度分けて図にしておくと、次にどんな新機能が来ても、どちらの層に足すかで即断できる。

今週の30分でやること

最後に、この記事を読んだ今日から動けるように、30分でできる棚卸しを3つ置いておく。

1つ目、海外客が来る店は翻訳DMをオンにして、送る側の定型文を短文で3本用意する。「空室あります」「満室です、次の候補は◯日」「予約はこちらのフォームから」の3本があれば、初動の大半はカバーできる。翻訳が崩れないよう、一文一情報で書くのがコツだ。

2つ目、営業時間外に来た問い合わせを、予約送信で翌朝に届ける運用に切り替える。夜に即レスしていたぶんを、翌朝の開店前に予約しておくだけで、返信の質も自分の睡眠も守れる。

3つ目、自分のDM導線を「機械の層」と「人の層」に紙1枚で分けてみる。入口で取りこぼしているのか、対応で落としているのか。どちらの層が薄いかが見えれば、次に足すべき手が自動的に決まる。ここまでやって「機械の層が薄い」と分かったら、コメント→自動DMの設計が次の一手になる。

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