交流会の名刺交換で、3回同じ質問をされた
先週の木曜、佐賀市内の異業種交流会に顔を出した。名刺を交換して「Instagramの導線設計をやっています」と言うと、返ってくる質問はだいたい決まっている。「フォロワー、何人ですか?」。その日は2時間で3回聞かれた。
この質問が出るのは、フォロワー数が「そのアカウントの信用を測る、いちばん手軽な物差し」だからだ。プロフィールを開けば誰でも見える数字で、多ければ強く、少なければ弱い。店舗のオーナーさんが「まず1万人を目指したい」と言うのも、この物差しが世の中に浸透しているからだと思う。
ところが帰りの車で読んだ海外ニュースで、手が止まった。Instagramが、この物差しそのものをプロフィールから外すテストを始めている。フォロワー数を追いかける運用の前提が、土台から変わるかもしれない話だ。
今日は、この表示テストの中身と、数字の看板が効かなくなる前に整えておく「DMの中身」3設計を、ManyChat構築125社の現場から書く。
何が始まったのか:「フォロー中」が「友達」に置き換わるテスト
Social Media Todayなど複数の海外メディアが報じた内容によると、Instagramはプロフィールの「フォロー中(Following)」表示を「友達(Friends)」に置き換えるテストを開始した。「友達」に表示されるのは相互フォローの相手だけ。さらに2026年8月のアップデートまとめでは、フォロワー数ではなく相互の「友達」だけが見える仕様のテストも確認されている。
整理すると、変化はこうなる。
背景にあるのは、Metaがはっきり公言している方針だ。いわく、いまのInstagramの交流の中心はフィードではなくDM。実際、初めてDMする相手との会話開始画面に「双方がフォローしている共通のクリエイター」を提示するカードのテストも同時に走っており、開発リソースがDM周りに集中しているのが分かる。
この流れは当ブログで書いてきた変化とも一直線につながっている。ナビゲーションを個人化してDMを正面玄関にするUIテスト、反応が落ちたフォロワーを可視化するAudience Connections。そして今回の「友達」表示。3つを並べると、Instagramが向かう先は明らかだ。数字の広場から、関係性の店内へ。
なぜ重いのか:「1万人を目指す運用」の前提が崩れる
フォロワー数がプロフィールの前面から消えると、何が起きるか。まず、数字による権威付けが効かなくなる。「フォロワー1万人の実績があります」という看板は、見る側がその数字を確認できて初めて機能する。表示されなければ、初見の人がアカウントを信用する材料は「投稿の中身」と「話しかけたときの対応」しか残らない。
次に、フォロワーを増やすこと自体を目的にした施策の価値が下がる。プレゼント企画で一時的に数字を膨らませても、相互フォローの「友達」にはならないから、新しい表示にはほとんど反映されない。逆に、たとえ数百人でも、DMでやり取りのある相手が多いアカウントは、Instagramのアルゴリズム上もプロフィール上も強くなっていく。
店舗の商売に置き換えると分かりやすい。これまでは「店の前の行列の長さ」で選ばれていたのが、これからは「店主と客が会話している様子」で選ばれるようになる。行列は演出できるが、会話は演出できない。正直な店ほど有利になる変更だと個人的には思う。ただし、会話の受け皿を用意していない店にとっては、看板だけ外される痛い変更でもある。
まだテスト段階で、全アカウントに展開されると決まったわけではない。ただ、リーチの約18%減、フィードの半分がおすすめ枠、という2026年前半の流れを踏まえると、「数字より関係性」への移行は方向として固まっている。テストの結果を待ってから動くより、いま受け皿を作っておく方が得だ。
会話は演出できない。
次に選ばれるのは、会話のある店。
数字の看板より先に整える、「DMの中身」3設計
では、フォロワー数が見えなくなる時代に何を整えておくか。125社のManyChat構築で使ってきた型から、優先順位の高い順に3つ挙げる。どれも「フォロワーを増やす」施策ではなく、「いるフォロワーと会話が始まる」ようにする設計だ。
今日20分でやる、「数字が消えた自分の店」の点検
テストが自分のアカウントに来るのを待つ必要はない。今日20分で、次の3つを確認してみてほしい。
1つ目、スマホでログアウトするか家族のスマホを借りて、自分のプロフィールを初見の目で開く。そしてフォロワー数を手で隠して眺める。数字なしで、この店が何屋で、どこから話しかければいいか、10秒で分かるか。分からなければDesign 01の出番だ。
2つ目、直近のDM受信箱を開き、この1か月で「こちらから会話を始めた」やり取りが何件あるかを数える。ゼロなら、フォローされた瞬間の一通が仕組みとして存在しないということ。Design 02の自動あいさつDMを検討するサインになる。
3つ目、いま常連だと思うお客さんを5人思い浮かべ、その人たちの「来店のきっかけ」を自分が言えるかを試す。言えない相手が多いなら、会話はしていても記録が残っていない。Design 03のタグ設計から始めるのが向いている。
「数字の運用」から「会話の運用」への乗り換えは、設計の仕事
3設計はどれもManyChatの標準機能で組める。ただ、道具の操作より難しいのは、自分の店の場合はどの入口で、どんな一通で、何を記録するかという設計の部分だ。エステサロンと飲食店とECでは、同じ「あいさつDM」でも中身がまるで違う。そして接続方式によってFollow to DMベータが使えるかどうかも分かれるため、いま使っている環境の確認から始める必要がある。
SUICSはManyChatの構築を125社やってきて、その大半が地方の店舗・個人事業主のアカウントだった。フォロワー数を追う運用から会話を積む運用への乗り換えは、この2026年で間違いなく最大の転換点だと感じている。
「何人ですか?」から「どんな会話してますか?」へ
あの交流会で聞かれた「フォロワー何人ですか?」に、これからは別の答え方をしようと思っている。「数はそこそこですが、DMでの会話は毎日あります」。いまはまだ伝わりにくい答えかもしれない。でも、Instagramの表示がテストの方向で変わっていけば、1〜2年のうちにこちらが標準の物差しになる。
数字は借り物で、会話は自分のもの。看板が外される前に、帳場を作っておく。テスト段階のいまが、いちばん静かに準備できるタイミングだと思う。