水曜の夜、出張先の居酒屋で、隣の席の二人が撮った写真は、店のプロフィールには載らなかった
9月9日、水曜の夜。出張先の駅前で入った小さな居酒屋のカウンターで、隣の席の二人組が、届いたばかりの刺身の盛り合わせを何枚も撮っていた。「ここ、タグ付けしとくね」と一人が言って、店の名前を探して投稿した。店主は厨房から「ありがとうございます」と声をかけていた。いい店だな、と思って、帰りの電車でその店のInstagramを開いた。
プロフィールに並んでいたのは、店主が撮った暗めの料理写真が12枚。さっきの二人が撮った、湯気の立つ明るい刺身の写真は、どこにもなかった。当たり前だ。他人の投稿は、自分のプロフィールの一覧には載らない。載せたければ、写真をもらって自分で投稿し直すしかなかった。店主にそんな時間はない。
その翌日、9月10日。Instagramが、まさにこの「他人の投稿を、自分のプロフィールの一覧に並べる」機能を発表した。お客さんが撮ってくれた写真が、投稿し直さずに、店の看板になる。ただし、この機能には、日本のお店が特に気をつけるべき落とし穴が1つある。今日はその落とし穴と、乗り越えるための3つの設計を書く。
先に結論——「タグ付けされた投稿」を「グリッドに追加」できる。ただし、見えるかどうかは相手の設定しだい
言葉を2つだけ、そろえておく。「タグ付け」は、誰かが自分の投稿の写真に、お店のアカウント名を貼り付けることだ。「グリッド」は、プロフィールを開いたときに並ぶ、投稿の一覧のことだ。これまで、タグ付けされた投稿は、プロフィールの中の「タグ付け」という別のタブに集まるだけで、メインの一覧には出なかった。
2026年9月10日、Instagramは、タグ付けされた投稿をメインのグリッドに追加できる機能を発表した。この記事を書いている時点では、Instagramの発表を伝えたTechCrunchとEngadgetの記事(どちらも9月10日付)で内容を確認している。Instagram公式のヘルプページにはまだ反映を確認できていないので、細かな画面の文言は変わる可能性がある。その前提で、確認できた内容は次のとおりだ。
追加する入口は3つ。タグ付けされたときに届く通知のDMから、投稿の右上の「…」メニューから、そして「タグ付け」タブで投稿を長押しして、から。追加しても、元の投稿は消えず、複製もされない。追加した投稿は、自分のグリッドから、いつでも外せる。外しても「タグ付け」タブからは消えない。追加した投稿は新しい順に並ぶが、並び替えもできる。世界中に順次広がっている途中で、この記事の時点ではまだ出ていないアカウントもある。
そして、いちばん大事な一文がある。「追加」のボタンの下に、こう書かれている。自分のプロフィールに追加しても、誰に見えるかは、自分のアカウントと、タグ付けした相手のアカウントの公開設定によって決まる。つまり、お客さんが非公開(鍵付き)のアカウントなら、その投稿を店のグリッドに追加しても、そのお客さんをフォローしている人にしか見えない。店を初めて訪れた人には、見えない看板になる。
自分の「タグ付け」タブを、上から10件数えてほしい。何件が鍵付きか
この落とし穴が、自分の店でどのくらいの大きさなのかは、今日すぐに確かめられる。自分のプロフィールの「タグ付け」タブを開き、上から10件、投稿した人のアカウントを開いて、鍵のマークが付いているかを数える。日本では、個人のアカウントを鍵付きにしている人が多い。友達だけに見せる使い方が普通だからだ。だから、数えてみると「追加しても、新しいお客さんには見えない投稿」のほうが多い店が、珍しくないはずだ。
ここで、SUICSが自分で確かめた一次情報を1つ置いておく。ManyChat(Instagramの自動返信の道具)の公式ヘルプには、ストーリーズで店をメンション(アカウント名を貼ること)してくれた人へ自動でお礼を返す機能について、「公開アカウントから投稿されたストーリーズのメンションにだけ反応する」と書かれている。つまりInstagramの仕組みは、今回の新機能に限らず、非公開アカウントの投稿は、店の側からは扱えないという前提で組まれている。「タグ付けされた投稿を全部グリッドに追加すれば、店の看板が増える」とは、日本のお店ではならない。公開アカウントのお客さんに、タグ付けしてもらうところまで含めて設計しないと、この機能は「自分のスマホの中でだけ賑やかな看板」で終わる。
ここから、3つの設計を順に書く。1つ目は、頼む導線。2つ目は、返すDM。3つ目は、並べる場所だ。
追加した瞬間ではなく、
見えた瞬間に、看板になる。
今日から始めるための、1枚のメモ
3つの設計を、いっぺんに始める必要はない。順番がある。まず、設計01の「頼む1枚」を作る。これが無いと、タグ付けそのものが増えない。次に、設計02の「返す文」を1通、決めておく。ManyChatを使っている店なら、ストーリーズのメンションへの自動お礼を、設定画面で有効にする。ManyChatを使っていない店は、通知のDMを閉店後に見る5分から始めればいい。設計03は、公開アカウントのお客さんの投稿が3件たまってからでいい。用意するメモは、次の形で足りる。
このメモがあれば、機能が自分のアカウントに届いた日から、迷わず動ける。まだ届いていない人も、設計01と02は今日から始められる。機能が届いたとき、追加できる公開アカウントの投稿が、すでに何件かたまっている状態にしておくのが、いちばん早い。
最後に:写真を撮ってくれた人に、まずお礼を返す。看板は、そのあとについてくる
正直に書いておくと、この機能で来店が増えることを約束はできない。看板が1枚増えても、料理や仕上がりが変わらなければ、お客さんの数も急には変わらない。増えるのは、店を訪れた人が「他のお客さんはどう感じたか」を、プロフィールを開いた最初の3秒で見られる、という一点だ。
そして、その一点のために欠かせないのは、機能の使い方より、写真を撮ってくれた人にお礼を返す、という当たり前の一手だ。冒頭の居酒屋の店主は、厨房から「ありがとうございます」と声をかけていた。あの一言を、DMでもう1回返す。返した相手の投稿だけを、看板にする。SUICSがManyChatの構築を125社で続けてきて、いちばん長く効いていたのは、自動化の巧みさより、この順番だった。お客さんの写真は、追加した瞬間ではなく、見えた瞬間に、そして、お礼が届いた瞬間に、看板になる。