お盆休みの高速バスで、去年作った「AI店員」を思い出した
8月のお盆前、福岡行きの高速バスの中でスマホを開いたら、海外ニュースの見出しが目に入った。「MetaがAI Studioでの新規AIキャラクター作成を終了」。2026年8月10日付の発表だった。
それを見て思い出したのが、去年テスト用に作った「AI店員」だ。Metaの純正機能AI Studioを使うと、自分のアカウント用にAIキャラクターが作れて、フォロワーからの質問に24時間自動で答えてくれる。「これが完成度を上げてきたら、店舗の接客はこれで足りるようになるかもしれない」と、クライアント店舗への導入も視野に、営業時間や定休日の質問に答えるキャラを組んで検証していた。
その「作る側の入口」が、閉じた。既存のキャラとのチャット自体は続くものの、新しく作ることも、既存キャラを編集することも、もうできない。もし去年の検証のままクライアント店舗の接客をAIキャラに寄せていたら、今ごろ導線の作り直しに追われていた。バスの中で、少し背筋が冷えた。
今日は、この発表で何が変わったのかの整理と、そこから引き出すべき教訓——「プラットフォームの純正機能に接客の中核を預けない」ための3つの資産化設計を、ManyChat構築125社のSUICSの動線設計視点で書いていく。
何が起きたのか——作成は終了、チャットは継続、軸足は次世代AIへ
まず事実関係を整理する。Metaが2026年8月10日に発表した内容は、大きく3点だ。
注目したいのは、この機能が「失敗作だったから消えた」わけではないという点だ。AIキャラとのチャットは使われていたし、だからこそ既存キャラとの会話は残される。それでも、Metaが次世代モデルへ軸足を移すという経営判断ひとつで、「作る側」の入口は閉じた。
ここに、店舗や個人事業主が読み取るべき本質がある。純正機能が続くかどうかは、機能の出来ではなく、プラットフォームの都合で決まる。使う側の努力ではコントロールできない領域だ。
「純正機能は突然閉じる」——今回が初めてではない
振り返れば、この手の話は繰り返されてきた。Instagramのライブ配信の仕様変更、ハッシュタグの扱いの変更、リーチアルゴリズムの度重なる変動。直近では「見る側がアルゴリズムを自分で調整できる」Your Algoの展開が進み、おすすめ表示だけに頼る集客の不安定さは増す一方だ。
それぞれの変更は、Metaにとっては合理的な進化だ。ただ、その上で商売をしている側から見ると、借りている土地の地形が、ある朝突然変わるようなものでもある。しかも今回のAIキャラ終了で分かったのは、消えるのは古い機能だけではないということだ。AI Studioは2024年に鳴り物入りで登場した、当時の最新機能だった。登場から2年での方針転換。「新しい機能だから当分は安泰」という読みも通用しない。
誤解しないでほしいのは、「だから純正機能を使うな」という話ではないことだ。純正機能は無料で、審査も導入コストもなく、リーチの入口として最強だ。問題は使うかどうかではなく、どこまでを純正に任せ、どこからを自分の資産で持つかという線引きにある。
SUICSが125社のManyChat構築で一貫して守ってきたのは、この線引きの設計だ。今回のAIキャラ終了は、その設計の重要性をMeta自身が証明してくれた形になる。以下、具体的な3つの設計を書く。
接客を資産にする3つの設計
機能の出来ではなく、プラットフォームの都合で決まる。
だから中核は、自分の資産の上に置く。
「AI接客」そのものは、これから本番を迎える
最後に、誤解のないように書いておきたい。今回の発表は「AI接客の終わり」ではない。むしろ逆だ。MetaはMuse Spark世代のAIに集中するために古い形を畳んだのであって、InstagramのAI機能はこれからも増える。AIが接客の一部を担う流れ自体は、加速していく。
だからこそ、順番が大事になる。まず自分の側に、シナリオの正本と連絡先リストという資産を持つ。そのうえで、新しく出てくる純正AI機能を「入口の強化パーツ」として乗せていく。この順番なら、次にどんな機能が来ても、どんな機能が消えても、商売の中核は揺れない。
実際、SUICSのクライアント店舗では、この2年でInstagram側の仕様変更を何度も踏んできたが、コメント→自動DM→LINE登録という中核の1本線はどの店でも動き続けている。入口の機能が変わるたびに差し替えたのは入口だけで、シナリオとリストは一度も作り直していない。資産化設計の効き目は、平時には見えにくく、仕様変更のたびに効いてくる。
逆の順番——先に純正機能へ全部を預けて、消えてから慌てる——を選ぶと、今回のAIキャラ終了のようなニュースのたびに、導線の作り直しに追われることになる。Instagramの入口がDMへ移りつつある今の流れは「Instagramが“DMを正面玄関”にするUIテスト開始」でも書いたが、DMという最重要の接点だからこそ、その設計は自分の手元に置いておくべきだ。