このケースの全体像
古民家再生・リノベーションの工務店オーナーさんと話すと、ほぼ全員が同じ悩みを抱えている。「問い合わせは来る。でも、9割は冷やかし。本気で検討している1割を見つける作業に、毎日追われている」──というあの悩みだ。
古民家再生は、平均500万〜数千万円の超高単価工事。検討期間は半年〜2年。決断のハードルが非常に高い業種だ。だから、軽い気持ちで問い合わせる人が多くなる。「ちょっと興味があって」「いつかやれたらなと思って」「ざっくり費用感を知りたくて」──こういう問い合わせに、毎回ゼロから対応していたら、工務店オーナーは疲弊する。
このケースで組んだのは、真逆の発想の動線だ。問い合わせを増やすんじゃなくて、減らす。ただし、減らすのは「冷やかしの数」であって、「本気の検討客」じゃない。むしろ、本気の検討客は取りこぼさず、長期にわたって関係を維持する。これが「高単価フィルタリング型」の動線設計です。
核となる発想はシンプル。「全員に売らない」と最初から決めること。価格レンジ・工期・対応範囲を、最初の24時間以内に正直に伝える。これだけで、合わない人は静かに離れ、合う人だけが残る。残った人とは、数ヶ月〜2年の長期にわたって、深い検討の伴走をする。
本記事では、その7ステップを、ManyChatの操作レベルまで含めて公開する。古民家再生だけでなく、注文住宅・大規模リノベ・別荘建築・移住相談など、超高単価×超長期検討の全業種に応用できる内容です。
Before / After
- 月50件の問い合わせ、うち9割が冷やかし
- 1件1件に丁寧に対応していて、本気客の対応が薄くなる
- 「予算500万〜と聞いて去る人」が多発、説明工数が無駄に
- 検討期間が長い客を、フォローしきれず取りこぼす
- 見学会に来ても、その後の追客手段が電話とメールのみ
- 初期DMで価格レンジを正直開示、冷やかしが自動離脱
- 本気度タグで「すぐ/半年以内/長期検討」を見える化
- 用途別×時期別の事例集を自動配信、検討の質が向上
- 長期検討客にはLINEで月2回の事例配信、関係維持
- 見学会1件あたりの成約率が大きく改善、オーナーの時間も回復
問い合わせの「質」を変える、というのが本質
このケースに着手する前、オーナーさんから何度も聞いた言葉がある。「問い合わせを増やすより、質を変えたい」。これが、すべての設計の出発点だった。
具体的に、変えたかった数字はこれだ。
表面的には「問い合わせ50→40件に減った」ように見える。でも、実態は逆だ。本気で検討する人が、5件→15件に3倍化している。成約も1〜2件から6〜8件へ。なぜこんなことが起きるのか。理由は3つあります。
① 価格レンジを最初に正直に伝えることで、合わない人が自動で離脱する。これは「失客」ではない。そもそもお客様にならない人なので、ファネルを通る前に弾いた方が、お互いの時間を守れる。
② 検討期間が長い客が、取りこぼされなくなる。古民家再生は「今すぐ」じゃなく「1〜2年後」の客が多い。この層をLINEで長期育成することで、半年後・1年後の成約として戻ってくる。
③ オーナーが「冷やかし対応の時間」から解放されるので、本気客への深い対応ができるようになる。深い対応ができると、成約率がさらに上がる。好循環が始まります。
実装の全7ステップ
佐賀の現場でそのまま動いている設計を、ManyChat内の操作レベルまで含めて公開します。
Instagramの完成事例投稿を「事例集の入口」にする
ManyChat側の設定:
①
Instagram → Comments 機能で対象投稿を指定② キーワード「事例」「資料」「リノベ」「再生」「相談」など複数登録
③ キーワード検知 → 自動DM配信開始
④ 初回DMは「ありがとうございます!事例集をお送りする前に、まず30秒ご質問させてください」とフィルタリングへの予告
対象アカウントはInstagramビジネスアカウントかつManyChat接続済みであることが必須です。
投稿は「Before/Afterが分かる動画」が最強。冒頭3秒で「これはすごい変化だ」と感じさせる構成にしてください。
フィルタを挟むと「冷たい印象」になるのでは、と心配される方が多いが、実際には「ちゃんとした会社だ」という印象に変わる。むしろ信頼が上がります。
30秒の検討フェーズ確認(用途・物件・時期の3問)
Quick Reply ボタン で展開:Q1「古民家活用の用途は?」→ ボタン3択:自宅/カフェ・宿などの事業/まだ未定
Q2「検討中の物件はありますか?」→ ボタン3択:あり/探し中/まだ未定
Q3「ご検討の時期は?」→ ボタン4択:今すぐ/半年以内/1年以上先/情報収集段階
各ボタンに対応する
Tag を自動付与:・用途タグ:
use-home / use-business / use-undecided・物件タグ:
property-yes / property-searching / property-no・時期タグ:
timing-now / timing-6m / timing-1y / timing-researchさらに、Q3の回答で
本気度Lvを自動判定:・timing-now + property-yes →
serious-Lv3(最重要)・timing-6m or property-yes →
serious-Lv2・timing-1y / timing-research →
serious-Lv1(長期育成へ)「情報収集段階」を選んだ人を冷たく扱わないこと。1〜2年後の客はここに多い。長期育成フロー(Step 6)に確実に流すのがポイント。
用途別×時期別の「事例集」を即配信(6パターンを事前に準備)
① 自宅用 × 今すぐ:完成事例3件+施主インタビュー1件(動画)
② 自宅用 × 長期検討:物件探しの注意点+計画期間中の暮らし方
③ カフェ・宿用 × 今すぐ:商業利用の完成事例3件+収益化のリアル
④ カフェ・宿用 × 長期検討:物件選定のチェックリスト+資金計画
⑤ 未定 × 短期:用途別の比較(自宅 vs 事業の判断軸)
⑥ 未定 × 長期:「古民家再生とは何か」基本ガイド
ManyChatで
Condition ノードを使い、タグの組み合わせで適切な事例集に分岐配信。配信形式は
Generic Template でカルーセル:1枚目に大きなBefore/After写真、タップで物件詳細、最後のカードで「もっと事例を見る/見学会の案内」ボタン。この時点で、検討客は「自分のケースに近い実例」を3〜5件、手元のスマホで持っている状態になります。
写真は施主の許可を取った高品質なものを使う。スマホ撮影の素人写真は厳禁。一眼で撮影した自然光の写真が、業界平均より圧倒的に強いです。
24時間以内に「価格レンジと工期の現実」を正直に伝える
Delay ノードで以下のメッセージを自動配信:「事例はいかがでしたか?お送りする前に、まず正直にお伝えしておきたいことがあります」
① 古民家再生の費用感(用途別):
・自宅用フルリノベ:◯◯◯万円〜(坪単価◯万円〜)
・カフェ・宿への用途変更:◯◯◯万円〜(耐震・水回り等を含む)
② 工期:通常6ヶ月〜1年、用途変更を伴う場合は1年〜1年半
③ 弊社のスタンス:「予算◯◯◯万円以下」「工期半年以下」のご相談は、基本的にお受けしておりません
④ 「これでもご相談したい」と思われた方は、下のボタンから次へお進みください
最後のボタンが
Tag 付与のトリガーで、「serious-after-price」タグを発火。これが付いた人だけが、Step 5の見学会案内へ進む構造。正直に書くことで、合わない人は静かに離れます。残った人は、もう本気度が確定している状態です。
「弊社のスタンス」の書き方が重要。「お受けできません」と冷たく書くのではなく、「お互いの時間を大切にするため、最初にお伝えしておきます」のような言い方で。これだけで印象が全然違います。
最低予算ラインの設定は、自社の収益構造に合わせて慎重に。低すぎる設定は赤字案件を増やす。実績を見て、年に1〜2回見直すのが現実的です。
本気度Lv2〜3だけに「現地見学会」のDM案内+外部予約URL
本気度Lv2以上 の人だけに、毎月25日に Sequence で自動配信:メッセージ例:「来月の現地見学会のご案内です。日時:◯月◯日 10:00-12:00 /場所:◯◯(実物件の完成見学)/参加費無料 /定員5組。
ご興味があれば下のボタンから日時を選んでください → [TimeRex予約URL]」
TimeRexの設定:
・複数日時の枠を月単位で設定
・参加者の連絡先・興味のある用途を任意項目で入力
・予約完了でGoogleカレンダーに自動登録
さらに、見学会前日にリマインドDMを
Delay で自動配信。当日は職人さんと話せる時間も作ると、参加者の納得感が劇的に上がります。
「予約はメール/電話で」のような旧来の方式に固執しないこと。必ずワンタップで完結する予約URLを使う。これだけで予約率が2〜3倍違います。
見学会の場で、即決を求めない。古民家再生は半年〜2年検討が普通。「今日はじっくり見て、検討してください」の姿勢が、長期信頼に繋がります。
長期検討客のLINE育成(数ヶ月〜2年)
timing-1y or timing-research タグが付いた人を、ManyChat for LINEに誘導:Step 3の事例集配信時に「これから古民家のことを月2回、メルマガ感覚でお届けします。よろしければLINE登録をどうぞ → [LINE登録URL]」
LINE側の長期育成シナリオ:
・第1週:完成事例の動画(月2回)
・第3週:「古民家物件の見方」のコラム
・季節ごと:施工現場のリアル動画/職人インタビュー
・四半期に1回:見学会の特別招待
過度な営業はせず、「読み物としての価値」を最優先。
ManyChat側では、長期育成中の人にも「物件決まりました」「具体的な相談したい」と自発的に動ける入口を残しておく。ボタン1つで「個別相談予約」フローに戻れるよう、LINE側のリッチメニューにも設置します。
内容は「完成事例6割/コラム3割/お知らせ1割」のバランスが効く。お知らせ中心になった瞬間にブロック率が跳ね上がるので注意。
2年経っても動きがない人は、感謝メッセージと一緒に静かに配信を停止するのも選択肢。無理に追わない方が、ブランドが守られます。
物件決定タイミングの「個別相談予約」自動発火
① 「物件決まりました(具体的相談)」→ Step 7Aフローへ
② 「個別相談を希望(無料60分)」→ Step 7Bフローへ
③ 「現地見学会の最新情報」→ Step 5の見学会フローへ
Step 7A:「物件決まりました」
・即座に「おめでとうございます!」のお祝いDM
・物件情報のヒアリングQuick Reply(築年数/面積/所在地のざっくり情報)
・48時間以内にオーナーから個別連絡する旨を予告
・ManyChatの
Manager NotificationでオーナーのLINE/Slack/メールに即時通知Step 7B:「個別相談を希望」
・無料60分の個別相談予約URL(TimeRex)に直接誘導
・予約完了で「事前ヒアリングシート」のリンクを自動送信
どちらのフローも、オーナーが見落としゼロで対応できる仕組みになっています。
Manager Notification(管理者通知)の設定は構築初期に必ずやっておくこと。オーナーのスマホに通知が届かない状態は致命的。
個別相談で即決を求めない。古民家再生の決断は、何度かの対話を重ねて初めて出る。1回目は「ヒアリングと信頼構築」に専念するのが鉄則です。
このケースから学べる3つの原則
原則1:「全員に売らない」と最初から決めることで、本気の人だけが残る。古民家再生のような超高単価業種で「全員対応」は、オーナーを疲弊させ、本気客の対応の質を下げる。最初から価格レンジを正直に開示することで、合わない人は静かに離れる。離れた人は「失客」ではなく、「最初からお客様にならない人」。お互いの時間を守る誠実な設計です。
原則2:用途×時期で動線を分けると、検討の質が劇的に上がる。「自宅用×今すぐ」と「カフェ用×2年後」は、欲しい情報も検討プロセスも全く違う。最初の30秒で属性を取得し、その後の情報配信を完全に分けることで、お客様は「自分のための情報をくれている」と感じます。
原則3:長期検討客は「取りこぼさず、しかし急がせない」のが成約への鍵。古民家再生は1〜2年検討が普通。この層を月2回のLINE配信で関係維持し、「やる時が来たら戻ってこられる入口」を常に開けておく。急がせる営業は、この業種では必ず逆効果です。
同じ仕組みが使える他業種
この古民家再生の「高単価フィルタリング型」の流れは、以下の業種にそのまま応用できます。
注文住宅メーカー・高級リフォーム:価格レンジと工期の構造が同じ。フィルタリングの効果も完全に一致。
別荘建築・セカンドハウス事業:超高単価×長期検討の構造が古民家再生と完全一致。
移住相談・地方移住エージェント:検討期間が長い/用途別の分岐が必要、という構造が同じ。
高級車・クラシックカー販売:500万〜数千万円の価格帯で、本気客と冷やかしの選別が必要な業種。
ヨット・プレジャーボート販売:超高単価×趣味性が高い業種。事例カルーセル+見学会の構造が完全に応用可能です。