9月17日の朝、ホテルの部屋で開いたClaudeは、夜のうちに1歩目で止まっていた
9月17日、水曜の朝6時。出張先のホテルでノートPCを開いた。前の晩、寝る前にClaudeのCowork(ファイルを読んだり、資料を作ったりする作業用の画面)に「クライアント3社の先月のDM件数をまとめて、報告書の下書きにしておいて」と頼んで、そのまま眠った。朝には出来上がっているつもりだった。
画面には、下書きはなかった。あったのは「このフォルダを読んでもいいですか」という確認の1行と、「許可」のボタンだけ。夜中に頼んだ作業は、最初の1歩で止まって、私が起きるのを7時間待っていた。悪いのはClaudeではない。「どこまで確認なしで進めていいか」を、私が決めていなかった。それだけの話だ。
同じ日の朝、Anthropic(Claudeを作っている会社)が発表を出していた。「チャット」と「Cowork」を1つにする、という内容だ。これまで入力欄の横で選んでいた2つの入口がなくなり、代わりに「Manual」と「Auto」という、確認の頻度を決める設定が入力欄に置かれる。つまり、私が7時間分の失敗で学んだ「どこまで任せるか」が、これからはClaudeを使う全員が、最初に決めることになる。今日は、その決め方を書く。
先に結論——「どっちのモードか」は消えて、「どこまで任せるか」だけが残った
言葉を1つだけ、そろえておく。これまでのClaudeには、入口が2つあった。質問に答えてもらう「チャット」と、ファイルを読ませたり、Webを調べさせたり、資料を作らせたりする「Cowork」だ。どっちで頼めばいいのかは、使う側が先に決める必要があった。
2026年9月16日(アメリカ時間)、Anthropicは公式ブログと公式ヘルプで、この2つを1つにすると発表した。この記事は、その公式ブログと、公式ヘルプの「Claude Cowork and chat are one Claude」「Use Claude Cowork safely」の3ページを、9月18日に実際に開いて確認して書いている。確認できた内容は、次のとおりだ。
1つ目。入口を選ばなくてよくなる。短い質問なら短く答え、大きな仕事なら、Web検索・ファイルの読み込み・計算まで、Claudeが自分で手段を選んで進める。同じ会話の中で、両方を頼める。2つ目。まずProとMaxの有料プランに、数週間かけて順番に届く。同じプランでも届く日は人によって違う。入力欄にまだ「Chat」と「Cowork」の切り替えが出ている人は、まだ届いていない。Teamと無料プランはその後。一度新しい画面に切り替わると、前の2つに分かれた画面には戻せない。3つ目。文書を作る「Claude Docs」と、スライドを作る「Claude Slides」が同じ日に加わった。デザインを作る「Claude Design」と合わせて3つとも有料プランの試験提供(ベータ)で、作ったものはPowerPointやPDFで保存できる。
そして4つ目が、今日の本題だ。入力欄に「どのくらい確認するか」の設定が置かれた。公式ヘルプの言葉をそのまま訳すと、「Manual(初期設定)」はClaudeが行動する前に毎回聞いてきて、許すかどうかを自分で選ぶ。「Auto」は途中で止まらずに進み、行動の前に自動の安全確認が走る。設定はいつでも変えられて、会話ごとに効く。作業中に止めたり、やり直させたりもできる。
細かい変更も3つ。Web検索のオン/オフの切り替えはなくなり、必要なときにClaudeが自分で検索する。Coworkにあった「全体の指示文」は、設定の「General」の中の「Claudeへの指示」に引っ越したので、すでに指示文を書いていた人は、場所と中身を一度見に行ったほうがいい。そして、Webを調べたり、ファイルを作ったりする長い作業は、短い質問より利用量(プランごとに決まっている使える量)を多く使う。Autoで長く走らせるほど、上限に早く届く。
「モードを選ぶ」より「権限を決める」ほうが、店主には難しい
正直に言うと、「チャットかCoworkか」は、間違えても大した害はなかった。チャットで頼んだ大きな仕事は、ただ途中で止まるだけだった。今回入れ替わった「ManualかAutoか」は、性質が違う。Autoにすると、Claudeは確認なしで、ファイルを書き換え、メールを送り、フォームを埋めるところまで進める。便利さと、取り返しのつかなさが、同じスイッチについている。
公式ヘルプの安全のページには、判断の物差しがはっきり書いてある。Claudeの道具は、大きく2種類に分かれる。「読む道具」と「書く道具」だ。読む道具は、ファイルや受信箱を読む、画面を見る。書く道具は、予定を作る、ファイルを消す、画面を押す、送る。そして、書く道具のほうが危ない、と公式は明言している。さらに、Manualにすべき場面として、3つを挙げている。大事なファイルや口座やサイトに触れる作業。初めて使う道具や初めてのサイト。取り消しにくい作業、たとえばメッセージの送信や買い物。
SUICSはClaude導入の支援をしていて、「AIに任せる範囲」で迷う店主を何度も見てきた。怖がって全部を自分で確認し、結局使わなくなる人と、一度うまくいったので全部任せて、送ってはいけないものを送ってしまう人。真ん中がない。今日の3つは、その真ん中を作る分け方だ。1つ目は「読むだけの作業」、2つ目は「店の外に出る作業」、3つ目は「初めての作業」だ。
消えたのではなく、
「どこまで任せるか」に形を変えた。
今日から始めるための、1枚のメモ
新しい画面が自分のアカウントに届くのは、数週間のうちのどこかで、日は選べない。だから、届く前に決めておくほうがいい。届いた日に迷わないためのメモは、次の形で足りる。自分の店の作業を、上の3つに振り分けて書き込むだけだ。
このメモは、Claudeのためというより、自分のためのものだ。最初の1週間は、Autoの欄の作業だけで使ってみてほしい。「止まらない」の気持ちよさを知ってから、慣らしの欄に進む順番が、いちばん失敗が少ない。
最後に:任せる範囲を決めた人だけが、止まらないAIの恩恵を受け取れる
9月17日の朝に見た「許可」のボタンは、Claudeが慎重だった証拠であって、失敗ではなかった。失敗だったのは、慎重でなくていい作業に、慎重な設定のまま夜を任せた私のほうだ。逆の失敗は、もっと痛い。慎重であるべき作業に、止まらない設定で夜を任せると、朝には取り消せないものが外に出ている。
「チャットかCoworkか」を選ばなくてよくなったのは、間違いなく楽になる。ただ、その楽さは、「どこまで任せるか」を店主が決めた上に乗っている。公式ヘルプの最後には、Claudeが代わりに行ったことの責任は、送った内容も、買ったものも、すべて使う本人にある、と書いてある。裏を返せば、決める権利も本人にある。SUICSがClaude導入を125社の延長で支援してきて、うまくいっている店に共通していたのは、AIの賢さより、この「決めている」の一点だった。届く前に、メモを1枚。それだけで、朝の画面はずいぶん変わる。