Notes / AI & DX

作業を録画して、
AIに“やり方”を覚えさせる

2026.08.01

7月最後の水曜、請求書を作りながら画面録画を回してみた

7月最後の水曜の朝、月末の請求書をまとめて作る日だった。取引先ごとにテンプレを開き、金額を差し替え、日付を直し、PDFに書き出してメール本文を整える——毎月かならず来る、地味だが手を抜けない作業だ。その日はふと思い立って、いつも通り作業する手元を画面録画で回してみた。ついでに「ここは取引先名を入れて」「ここは前月と同じ書式で」と、声に出して手順を説明しながら進めた。

録画が終わって気づいた。プロンプトを一文字も書いていない。いつもの作業を、いつも通りやって見せただけだ。それでもClaudeは、そのやり方を「請求書作成」という一つの手順として覚え、翌月からは同じ流れを再現できる状態になっていた。指示を言葉で組み立てるのではなく、背中を見せて教える。これが今、Claudeのデスクトップ業務モードに入った「作業を録画して覚えさせる」機能の正体だ。

この記事では、この機能が何を変えるのかを整理したうえで、いちばん大事な「では、最初に何を教えればいいのか」を、SUICSが自社の仕事で試した実感から3つの条件にまとめて渡す。AIに詰まってきた個人事業主・店舗オーナーが、明日の朝いちばんに録画すべき1作業を選べるようにする。

「指示を書く」から「背中を見せる」へ、教え方が丸ごと変わった

これまでAIに仕事を任せるには、やってほしいことを言葉で書く必要があった。いわゆるプロンプトだ。ところが非エンジニアがAIで最初につまずくのは、まさにここにある。頭では手順が分かっているのに、それを他人に伝わる文章へ翻訳しようとすると急に手が止まる。「毎週やっているアレ」を言語化する作業そのものが、地味に重い。

録画で教える方式は、その翻訳工程を丸ごと飛ばす。画面録画を回して、いつもの作業を実際にやって見せ、要所を声で説明する。それだけでClaudeが一連の流れを手順として記憶し、次回から同じ作業を再現できるようになる。指示文を組み立てる能力ではなく、いつもの仕事を普通にこなせる能力さえあれば、AIに教えられる。これは、AI活用の入口の高さがぐっと下がったということだ。

相性がいいのは、頭では分かっているのに言葉にしづらい定型作業だ。請求書作成、予約の確認返信、SNS投稿の下書き、顧客情報の台帳への転記——どれも「やれと言われればできる」のに「文章で説明して」と言われると詰まる作業ほど、録画で見せる価値が大きい。言語化のハードルが高い作業ほど、この機能の恩恵を強く受ける。

プロンプトを書ける人だけがAIを使える時代は、
静かに終わりかけている。
これからは、いつもの仕事を見せられる人が使う。

最初に教える1作業は、この3条件で選ぶ

録画で教えられると分かっても、多くの人が次の一歩で止まる。「で、結局どの作業から録画すればいいのか」だ。ここを勘で選ぶと、たまにしか発生しない作業や、その場の判断が多すぎる作業を選んでしまい、覚えさせた手間のわりに使う場面が来ない。最初の1作業は、次の3条件で選ぶと外さない。

Condition 01
毎週・毎月かならず繰り返す作業か(頻度)
目安:週1回以上、または毎月定例で発生する作業
録画して教える手間は一度きり。だから、その先で何度も再利用できる作業ほど元が取れる。年に1〜2回しか来ない作業を覚えさせても、次に使う頃には手順そのものが変わっている。逆に、月末の請求書、毎週の在庫報告、毎日の予約確認のように「必ずまた来る」と分かっている作業は、教えた瞬間から毎回時間が浮く。まず自分のカレンダーと定例作業を見て、いちばん高い頻度で顔を出す作業に印をつける。
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発生の頻度
合う例
月末請求・週次報告
外す例
年1の棚卸し
Check
「これ、来月もまたやるな」と即答できる作業なら合格。
Condition 02
手順は決まっているのに、言葉で説明しづらい作業か(録画の本領)
目安:「見せた方が早い」と感じる作業
録画で教える方式が本領を発揮するのは、まさに「やれば分かるが、書くと長い」作業だ。どのボタンをどの順で押すか、どの画面からコピーしてどこに貼るか——文章にすると細かくて心が折れる手順ほど、画面を見せれば一発で伝わる。逆に、文章一行で説明が終わる単純な作業は、わざわざ録画しなくても短い指示で足りる。新人に口で説明しようとして「うーん、やって見せた方が早いな」と感じたことのある作業。それが録画向きの本命だ。
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言語化の重さ
合う例
画面をまたぐ転記
外す例
一行で済む依頼
Check
「口で説明するより見せた方が早い」と思う作業なら合格。
Condition 03
順番やルールが決まっていて、崩れると困る作業か(固定する価値)
目安:手順が前後すると事故る、抜けが許されない作業
3つ目は、順番やルールが結果を左右する作業だ。請求書なら「宛名の敬称」「振込先の口座」「消費税の扱い」を毎回同じに保つ必要があり、一つ崩れると信用に関わる。こういう作業を人の記憶だけで回すと、忙しい日にかぎって抜けが出る。録画で手順を固定してしまえば、その順番とルールが毎回そのまま再現され、体調や忙しさに左右されなくなる。ミスが許されない作業ほど、記録して固定する見返りが大きい。一方、その都度こちらの好みや相手の反応で正解が変わる作業は、まだ人が握った方が安全だ。
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ミスの重さ
合う例
請求・入金確認
外す例
毎回変わる企画
Check
「順番を間違えると事故る」作業なら、固定する価値が高い。

3条件のうち2つ以上に当てはまる作業が、最初に録画すべき1本だ。頻度が高く、言葉にしづらく、順番が大事——この3つがそろう作業の代表格が「月末の請求書作成」であり、私が最初に録画したのがまさにそれだった。逆に、年1回・その場判断だらけ・毎回正解が変わる作業から手をつけると、覚えさせた労力が報われにくい。

How to teach Claude
「書いて教える」と「見せて教える」、入口の高さが違う
WRITE vs SHOW 従来:指示を書いて教える 1. 手順を思い出す 2. 文章に翻訳する ← ここで多くの人が止まる 3. 言葉を直しながら試す 4. やっと動く 必要な力 言語化する力 これから:録画して見せる 1. 録画を回す 2. いつも通り作業する 3. 要所を声で説明する 4. 手順として覚える 翻訳工程がまるごと不要 必要な力 いつもの仕事をこなす力

SUICSは自社の仕事で先に試している

この機能について、SUICSは外から眺めて解説しているわけではない。SUICS自体が、Claudeのデスクトップ業務モードで会社そのものを運営している当事者だ。請求書の作成、このブログの日々の更新、クライアントのManyChat設定——実際の業務のなかで、録画して教える方式を先に自分たちの手で回している。だからこそ、代行だけを請け負う競合には出せない一次情報として、何がうまくいき、どこに注意がいるかを具体的に語れる。

試してみて分かったのは、最初の録画は短くて回数の多い作業から始めるのが正解だということ。いきなり30分の大作業を録画すると、途中の判断が多すぎて手順がぶれる。5分で終わる定型作業を一つ、丁寧に見せて覚えさせ、それが安定して再現されるのを確認してから次へ進む。この「小さく見せて、確かめて、増やす」順番が、非エンジニアがつまずかない進め方だ。

たとえばこのブログの更新も、毎朝ほぼ同じ流れで回している。ニュースを拾い、切り口を決め、決まった書式で本文とサムネを整え、所定の場所に保存する——工程の数は多いが、順番はいつも同じだ。こういう「工程は多いが順番は固定」の仕事こそ、録画で見せて手順を固定する相性がいい。ManyChatの初期設定も同じで、アカウントを繋ぎ、あいさつメッセージを組み、コメントから自動DMへ流す導線を敷く一連の型を、毎回ゼロから思い出すのではなく、覚えさせた手順の上で微調整する形に変わってきている。手が覚えている型を、AIにも持たせておく感覚に近い。

注意点も正直に書いておく。録画で教えた手順は、見せた通りにしか動かない。だから、その日の相手や状況で正解が変わる仕事——たとえば込み入ったクレーム対応や、新しい企画の方向づけ——まで丸ごと任せようとすると外れる。任せるのは「毎回同じでいい作業」、握り続けるのは「その都度考える作業」。この線引きだけは、人が引く必要がある。AI活用で失敗する会社の共通点は、この線引きを飛ばして一気にやろうとするところにある。過去の失敗パターンは 「AI導入で失敗する中小企業の3つの共通点」 の記事にまとめてある。

「自社の作業をAIに覚えさせたい」と思ったら

録画で教える方式は入口を下げてくれるが、それでも「どの作業から手をつけ、どこまでAIに任せ、どこを人が握るか」の設計は、事業ごとに答えが変わる。SUICSのAI/DX導入支援では、まず御社の業務を棚卸しして、録画で覚えさせるべき定型作業と、人が握り続けるべき判断作業を仕分けするところから始める。そのうえで、実際に録画して手順を固定し、日々の運用に定着するまで並走する。ツールを渡して終わり、ではなく、御社の現場で回り続ける状態までを設計する。

SUICS Service — AI / DX 導入支援
御社の“いつもの作業”を、AIに覚えさせるところから。
解決できる悩み:「プロンプトが書けなくてAI活用が進まない」「毎月かならず来る定型作業を自動化したい」「どの作業から手をつければいいか分からない」「AIに任せる作業と人が握る作業の線引きをしたい」「録画で覚えさせた手順を、現場に定着させたい」。業務棚卸し→任せる作業の仕分け→録画で手順を固定→運用に定着、の順で、御社のくり返し作業をAIに肩代わりさせます。
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まずは自分ひとりで小さく試したい人は、月数千円で組める自分専用のAI秘書づくりから入るのが早い。5機能の作り方は 「月2000円で雇うAI秘書の5機能と作り方」、外注ゼロで自動化の仕組みを内製する手順は 「個人事業主が30分でAIエージェントを内製する3ステップ」 にまとめてある。明日の朝、まずは1作業。カレンダーを開いて、いちばん頻度の高い定型作業に印をつけるところから始めてほしい。

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