日曜の夜、来月分の外注費リストを作っていたら、消費税の計算がひとつ変わっていることに気づいた
昨日、9月27日(日)の夜、事務所のパソコンで来月分の外注費の支払いリストをスプレッドシートにまとめていた。SUICSでは記事の写真撮影や一部のライティングを、社外のフリーランスに何人か頼んでいる。いつもと同じように金額を入力していたところで、ふと手が止まった。消費税の欄の計算方法が、来月から少しだけ変わるはずだと思い出したからだ。
「インボイス制度」という言葉自体は、もう耳慣れているかもしれない。インボイスとは、正式な形式で書かれた請求書(適格請求書)のこと。この請求書を発行できるのは、税務署に登録した「課税事業者」だけで、消費税を納めなくてよい小さな会社や個人(免税事業者)は、原則としてインボイスを発行できない。
ただ、制度が始まった2023年10月からしばらくの間は、免税事業者から仕入れた分でも、一定の割合を消費税の計算から差し引ける「経過措置」という緩和期間が設けられている。この差し引ける割合(控除率)が、2026年10月1日から下がる。発効まで数日というタイミングだが、この変更自体があまり大きく報じられていないこともあり、来月の支払いをまだ確認していない人も多いはずだ。
「聞いたことはあるけど、自分に関係あるかは分からない」という人のために、この記事では国税庁の公式資料を実際に開いて確認した数字だけを並べ、免税事業者と取引がある個人事業主が今週やっておきたい3つの確認を紹介する。数字を確認するだけの作業なので、難しい判断はまだしなくていい。
国税庁の資料で確認できた、控除率が下がる正式なスケジュール
消費税には「仕入税額控除」という仕組みがある。自分が仕入れや外注費として払った消費税の一部を、自分が納める消費税額から差し引ける制度だ。インボイス制度の下では、この控除を受けられるのは原則、インボイスを発行できる登録事業者(課税事業者)からの仕入れだけになった。
インボイス制度が始まった2023年10月の時点で、この仕組みに一気に切り替えると、免税事業者との取引をやめる動きが増え、フリーランスや小さな事業者が仕事を失いかねないという懸念があった。そこで、免税事業者との取引が急に不利にならないよう、一定期間は免税事業者からの仕入れでも一部を控除できる「経過措置」が用意されている。国税庁の公式ページと、Q&Aの問113を実際に開いて確認したところ、控除できる割合は次のように段階的に下がっていくと明記されていた。
2023年10月1日〜2026年9月30日は80%。2026年10月1日〜2028年9月30日は70%。2028年10月1日〜2030年9月30日は50%。2030年10月1日〜2031年9月30日は30%。2031年10月1日以降は、原則として控除の対象外になる。
国税庁の「令和8年度税制改正特集」のページによると、実はこのスケジュールは2023年の制度開始時点の予定から見直されている。当初の予定では、2026年10月から3年間はいきなり50%まで下がる計画だったが、今回の税制改正で70%の段階が新たに挟まれた。つまり今回の変化は、当初の計画よりはゆるやかになった変更でもある。ニュースの見出しだけを見ると「控除率が下がる」という悪い話に見えるが、もともとの予定と比べれば負担の増え方は抑えられている、というのが公式資料を読んで分かった実際のところだ。
あわせて、一つの免税事業者からの年間の仕入れ額が一定額を超えると、その超えた部分はそもそも経過措置の対象外になる仕組みもある。この上限額も2026年10月1日から、これまでの10億円から1億円に引き下げられる。ただし、これは仕入れ額がかなり大きい事業者向けの話で、個人事業主や小さな会社の多くは気にしなくてよい範囲だ。
なお「2割特例」「3割特例」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれないが、これは自分自身がインボイスに登録して免税事業者から課税事業者になった側の負担を軽くする、別の制度だ。今回の経過措置は、免税事業者から仕入れる側(買う側)の話なので、混同しないよう国税庁の資料でも別の項目として説明されている。
もう一つ、公式資料を読んで意外だったのは、この経過措置は自動的に適用されるものではないという点だ。国税庁のQ&Aには、帳簿に「取引の内容」と「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を記載することが要件として明記されていた。実務では「80%控除対象」といった一言を書き添えるか、請求書に「※」などの記号を付けて、その記号が経過措置の対象を示すことを別途書いておく方法でもよいとされている。何も書かずに普段通りの記帳を続けていると、後で経過措置を使いたくても要件を満たせない可能性がある。
免税事業者と取引がある個人事業主が今週やる3つの確認
先ほどの外注費リストを作っていた手を止め、実際に自社の外注先を数え直してみた。ManyChat構築125社の現場で身についた「まず自分の状況を数字で確認する」というやり方は、税金の話でも同じように使える。個人事業主が今週やっておきたい確認は、次の3つだ。
「免税事業者と取引している課税事業者」こそ、今週確認したほうがいい。
今週のうちに、来月の支払い計画を1回だけ見直す
今回の変化は、免税事業者自身の消費税の負担を直接増やすものではない。影響を受けるのは、免税事業者から仕入れたり外注したりしている、課税事業者側だ。とはいえ、外注先に登録を頼むかどうかは、これまでの関係性や交渉のバランスもあるため、この記事では踏み込まない。まずは自分がどれだけ影響を受けるのかを数字で把握することが、次の判断をするための土台になる。
SUICSも今回、外注先を数え直して初めて「思っていたより登録が進んでいた」ことが分かった。数える前は身構えていたが、数えてみると対応は思ったより小さくて済むこともある。逆に、数えてみて初めて負担の大きさに気づく人もいるだろう。どちらであっても、数字にしてから判断したほうが、心配だけが先に立つ状態からは抜け出せる。
今回の70%への変化は、2031年10月に控除がなくなるまでの4段階のうち、まだ2段階目にすぎない。2028年10月には50%、2030年10月には30%と、あと2回同じような見直しがやってくる。今のうちに「外注先を数える」「消費税の計算方式を確認する」「差額を数字にする」という3つの手順に慣れておけば、次の段階が来たときも同じ型で見直せる。慌てて外注先に登録を頼むより、まずは自分の側の確認から始めるほうが、落ち着いて次の一手を選べる。
経理や請求書の整理をAIに任せる個人事業主も増えてきた。経理AIエージェントの記事や、総務・バックオフィスからAIを入れる記事で書いたように、請求書の仕分けや取引先の管理は、AIが得意とする「毎回同じ手順」の業務でもある。インボイスの登録状況の確認や、帳簿への一言の書き添えも、その延長で仕組み化できる作業のひとつだ。